購買部門・資材部門の存在意義って何?
いらないのでは?
本記事では、資材部門不要論について解説します。
部品選定の場面では、「設計者」と「取引先」だけで部品を決めてしまうケースがあります。
そうすると「資材なんかいなくても話が進むのでは?」と思う方もいるかと思います。
更には「資材がいると伝言ゲームになる、いない方がマシ」と思われるケースさえあります。
でも本当に資材部門は不要なのでしょうか?
この記事では、資材歴10年の著者が「資材は不要か?」について解説します。
・資材部門の存在意義が知りたい
・資材の付加価値はどこにあるのか知りたい
こんな疑問を解決します。
購買部・資材部はいらない?【資材不要論を現役調達部員が語る】
まずは資材部門がいらないと思う人たちの意見を紹介します。
・資材部門の仕事は「AI・ロボット」に代替される
・資材部員の仕事には、付加価値がない(誰でもできる)
資材不要の理由は、上記2つを挙げる人が多いのでは無いでしょうか?
詳しく分析してみます。
【資材不要】資材部門の仕事は「AI・ロボット」に代替される
野村総合研究所のレポートによると、「日本の仕事の約半分はAI・ロボットに代替される」と予想されています。
日本の労働人口の約 49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高い
【出典】野村総合研究所 日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に
僕は資材部門で10年以上働いていますが、業務の半分以上はAI・ロボットに置き換え出来ると思います。
上記業務は、定例化されているのでAIで代替可能です。
そして、資材部門の仕事の半分以上が上記業務です。
つまり将来的に、資材の仕事の半分以上は「AIに代替される」ことになります。
確かに通常業務は自動化できそうだよね・・・
【資材不要】資材の仕事には付加価値がない
取引先と価格交渉して、こう思ったことは無いでしょうか?
ぶっちゃけ設計者が交渉した方が成果が出せるのでは・・・
設計者は、「製品について詳しい」「設計段階で交渉できる立場」です。
ぶっちゃけ文系の資材部員よりも「交渉力」がありそうですよね。
実際多くの会社では、設計者がほぼ価格を決めてしまいます。
最後のいわゆる「資材ネゴ」だけを資材部員が担当するケースが多いです。
他にも納期調整でも、資材部員は社内の工程を動かす力がありません。
そのため伝書鳩のように納期情報を伝えるだけで、付加価値が低い仕事をしているケースが多いです。
いずれも資材の仕事は付加価値が低いので、「資材不要論」が出てくるのです。
資材はこっちの言う通りに仕事すれば良いんだよ!
ホントに購買部はいらない?購買部員が資材部門の必要性を論じる
上述の資材不要論には、一定の説得力があります。
でも僕は、それでも「資材部門には存在価値がある」と思っています。
僕が資材部門が必要と考える理由は、3つあります。
・AIではネゴはできない
・AIでは取引先と良好な関係を築けない
・設計者は資材業務をすべきでは無い
AIではネゴはできない
AIには「ネゴシエーション:交渉」ができないという致命的弱点があります。
資材部門では、「取引先と折衝し自社の利益を最大化する」という役割があります。
例えばAIは価格査定するのは得意ですが、それを取引先に納得してもらう力はありません。
相手の工場を訪問し、相手の責任者に直接お願いする事でようやく相手は動いてくれます。
また、納期交渉も同じです。
AIに納期交渉を任せても、無理やり相手の優先順位を変えてもらう事はできません。
でも資材部員がこちらの事情を直接説明しお願いすることで、優先順位が変わるのです。
このように「交渉」という1点では、AIが資材部員に勝つのは現時点では不可能です。
資材部員(人間)が直接交渉することに付加価値があるのです。
AIでは取引先と良好な関係を築けない
またAIには、取引先と良好な関係を築くという力はありません。
取引先と関係が築けないと、取引量が多い中国企業の納期を優先されます。
いつもお付き合いしているからこそ、中国が札束を出しても日本を優先してくれるのです。
このように資材部員と取引先担当者が「個人的な関係性」を築くことで、無理なお願いも聞いてもらえるようになるのです。
僕個人の経験ですが、やっぱり一度でも顔を合わせた人だと「納期調整がしやすい」です。
いきなり「初めまして」では、取引先も事務的な対応しか取ってくれません。
「取引先と良好な関係を築く」
この点において、AI・ロボットは人間には勝てません。
設計者が資材業務をすべきでは無い
設計者の方が製品知識が豊富です。
そのため、設計者の方が価格交渉で有利です。
それでも僕は「設計者は資材業務をすべきでは無い」と思います。
その理由は「設計者は設計業務に注力すべき」だからです。
設計者の本務は、設計業務です。
でも設計部門が価格交渉、発注処理を行うようになると、そちらの業務に忙殺されます。
すると設計業務よりも「事務処理能力」が重視されるようになります。
こうなると、良い設計が出来る訳無いですよね。
設計業務→設計者
価格交渉以降→購買・資材
このように役割分担をすることで、お互いのパフォーマンスを最大限に高められます。
出来るから「設計者が全部やれば良い」は暴論です。
設計者は設計業務に注力して、それ以外を資材部門がやれば良いのです。
もう一つ「設計者の不正を防ぐ」という目的でも資材の存在意義があります。
詳しくは、以下の記事をご覧下さい。
購買部門不要論から資材の本質が見えてくる
AIの台頭により、資材の存在意義が問われています。
でもAIの業務を知ることで、資材の本質的業務が見えてきます。
僕が考える「資材の本質」は、以下のとおりです。
・資材戦略立案・発注方針を考える
・重要な「価格・納期交渉」
・取引先・社内関係者との関係構築
資材部員としてリストラされない人材になるためには、資材の本質業務でレベルアップする必要があります。
他にも「AIを管理する業務」「マネジメント業務」も資材の本質的な仕事です。
仕事をする時は、できるだけ本質的な業務に注力するようにしましょう!
まとめ:購買部門はいらない?いいえ必要です!
資材・購買部門が必要な理由を再掲します。
・AIではネゴはできない
・AIでは取引先と良好な関係を築けない
・設計者が価格交渉、発注処理をすべきでは無い
資材業務の大半は「AI・ロボット」に置き換わります。
でも資材の本質的な業務は、残り続けます。
本質業務で付加価値を出せる資材部員が生き残ります。
この記事から「資材の未来はそこまで暗くない」ことを感じ取ってもらえたら嬉しいです。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
良かったら、他の記事も読んでみて下さい。きっとあなたの役に立つ情報があると思います。
コメント