先納期の確定注文の流れが危険だと思う理由【資材部員が解説】

長納期の確定注文の流れが危険だと思う理由【資材部員が解説】 資材業務について
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こんにちは、コロスケ( Corosuke blog)です。

この記事では、長納期化に伴う先納期の確定注文について僕が考える事を解説します。

      

2021年から調達環境が大きく悪化しております。

需要過多の状況が続いており、調達リードタイムも伸び続けております。

     

その結果、取引先から1年以上の超長納期での確定注文を要求されるケースが増えました。

     

1年先の確定注文を今すぐ出してください。確定注文が無い場合は、優先順位は後ろになります。

     

最近は、こんな要請ばっかりだよ・・・

       

こういった長期の確定注文を要求されるようになって、こう感じました。

     

この流れは極めて危険な気がする・・・

      

今回は、現役資材部員である著者が「長納期の確定注文の流れが極めて危険である理由」について解説していきます。

         

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先納期の確定注文の流れが危険だと思う理由【資材部員が解説】

       

僕が長納期の確定注文が危険だと思う理由は、以下のとおりです。

       

1年以上の確定注文によって、客先在庫がどんどん在庫が溜まり、どこかで在庫調整が一気に入るから

       

今の動きは、確実に大きな反動=在庫調整を引き起こす気がしてなりません。。。

詳しく解説します。

    

なぜ長納期の確定発注がダメなのか?

製造業で働く人なら当たり前ですが、1年先の実需は誰にも分かりません。

1年後の景気動向によって実需が変わるのは当たり前で、1年先の景気を正確に分かる人は存在しません。

     

そのような状況で1年先の確定注文を出そうとすると、ある意味「えいやっ!」と適当に算出するしかありません。

そして今の調達環境下で一番リスクなのは、部材が1年後に不足することです。

    

結果として、1年先の手配数は「多めの手配」とならざるを得ません。

その状況を表したのが、以下のイラストです。

     

【イラスト】1年先の長納期部品の確定注文を行うケース
【イラスト】1年先の長納期部品の確定注文を行うケース

      

需要が変わらない場合、多めに手配した分がどんどん在庫として積み上がっていきます。

仮に20%多めに手配した場合、1年後には約2ヶ月分の在庫がたまる計算です。

     

この状態で1年後を迎えると、多くの企業が在庫を調整せざるを得なくなります。

そしてその在庫調整によって、取引先への新規手配がパタリとストップする気がします。

      

更に気になるのが、今の好景気がいつまで続くのか?という問題です。

現在日本は、産機中心に需要は旺盛です。

多くの業界でまだモノ不足は続いております。

    

ですが世界の消費国アメリカでは、景気後退の足音が聞こえています。

現在アメリカは、急激なインフレに悩まされております。

     

【出典】ヤフーファイナンス_アメリカCPI
【出典】ヤフーファイナンス_アメリカCPI

 

このようにインフレが8%を超える状態となっており、市民の生活が圧迫されています。

そこで現在アメリカは、インフレを抑えるために急速な利上げ(金利の引き上げ)を進めています。

    

基本的に利上げは、景気を冷やす働きがあります。

そのため、近い将来景気後退が来るのでは?という予測もあります。

     

もし今後景気が後退し需要が減少すると、確定注文の在庫はどうなるのでしょうか?

      

【イラスト】半年後に実需が大きく減少したケース
【イラスト】半年後に実需が大きく減少したケース

      

このグラフは、半年後に需要が4割減少した場合の在庫の溜まり方です。

需要が減っても、確定注文なので注文数は基本的には減らせません。

     

その結果1年後には、約50,000個の在庫が溜まる事態に陥ります

これは約8ヶ月分の在庫となります。

そのため、半年後に需要が落ちる事態があれば、その後の注文が長期間止まる事態になってしまいます。

      

このように、1年以上先の確定注文をすることで、1年後に深刻な在庫調整が必要になる可能性があります。

個人的には、目先の生産安定を優先させた結果、1年後にツケを先送りしているようにしか見えません。

    

もちろん1年後にこのような結果になるかは誰にも分かりません。

しかし、はっきり言えるのは「深刻な在庫調整を引き起こすリスクの高い行為」であるという事です。

    

もちろんサプライヤー側にも言い分はあるけど

そう言われても、やはり1年分の注文が無いと安定生産は出来ません

    

もちろんサプライヤー側にも1年分の注文が必要な理由があります。

     

・確定注文によって安定的に効率良く生産ができるので、供給量が増える

・原材料手配・外注委託先との枠交渉・設備投資のために、1年以上の所要が必要

     

サプライヤーも、敢えてリードタイムを1年以上にしたい訳ではありません。

ですが、現状の供給が不足している状況では、安定生産のために1年の「確定」が必要なんです。

     

今は売り手有利の市況です。

そのため、例え1年先の確定注文でも、枠を確保するためにバイヤーは従わざるを得ません。

     

確かに、JITのように「数量変動リスク」を全てサプライヤー側に押し付けるのはおかしいと思います。

    

     

ただ今のように数量変動リスクを「全て客先=我々」に押し付ける運用も、如何なものかなと思います。

       

じゃあどうすれば良いのか?【運用案】

個人的に色々考えましたが、今の市況逼迫時は以下の運用が良いのでは?と思いました。

     

・JITのような運用は止める

・余裕を持った製造リードタイムで確定注文をする

・電子部品は、手配リードタイムを6ヶ月までとする

半導体など長期的に需要が不足する部品のみ、リードタイムを1年とする

・それより先の手配情報は、引取責任無しのフォーキャスト情報を出す

     

サプライヤーが安定的に製造できるように、製造リードタイムを確保して確定注文。

そして、それより先は引取責任無しのフォーキャストで運用する事が良いと思いました。

(極めて普通の結論となりました・・・)

    

1年先の所要は、誰にも分かりません。

その上で、設備投資をどうするかは、フォーキャスト情報を踏まえてサプライヤー自身が判断した方がトータルとして良いと思います。

(1年以上の先の責任まで客先に背負わせる運用は、前述のとおり弊害の方が大きいため)

      

もしより良い方法があれば、ぜひコメント等で教えて下さい!

     

まとめ:長納期の確定注文の流れは危険だと思う理由

本記事のまとめです。

     

・発注者は、JITのようなコロコロ納期を動かすやり方は改めるべき

・発注者も、全てのリスクを客先に押し付ける今の運用は改めるべき

     

個人的には、今の1年以上先の確定注文を要求するやり方は、やり過ぎだと思います。

短期的にはサプライヤー側は安定生産が出来ますが、そのツケが1年後にやってきます。

    

今は極端な需要過多なので仕方ない気もしますが、1年後がとても怖いなぁという結論でした!

     

最後まで読んでくれてありがとうございました!

      

    

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