こんにちは、コロスケ( Corosuke blog)です。
この記事では、2021年の世界の半導体不足の原因を解説します。
なんか最近半導体の入手性が悪化しているよ・・・
2020年の10月頃から市況が急回復しています。
それに伴い、半導体の納期が延伸し、モノが入手しづらくなっています。
でも何で半導体が手に入りにくいか理由をご存じですか?
この記事では、半導体バイヤーの著者が「2021年の半導体不足の原因」を解説します。
・半導体って何でリードタイムが伸びているの?
・市況のひっ迫はいつまで続くの?
こんな疑問に答えます。
【2021年】半導体不足の原因を解説|なぜ市況はひっ迫したのか?
半導体が不足している原因は、以下の5つにあります。
・20年10月以降、各分野の需要が「急回復」している(車・産機など)
・20年は巣ごもり需要で、PC・エアコンの需要が好調
・米国による中国SMICへの制裁影響
・旭化成延岡工場の火災影響
・世界の半導体市場は年々伸びている
今回の市況ひっ迫は、過去最悪と言われています。
ここまで状況が悪化したのは、上記5つの要因が同時多発的に起きたからなんです。
上記5つのポイントを深堀します。
20年10月以降、各分野の需要が「急回復」(車・産機など)
20年3月のコロナショックで、世界の市況はかつてないほど落ち込みました。
車などは、20年4月頃は「生産台数が半減」していました。
トヨタ自動車が28日発表した4月の生産・販売・輸出実績(トヨタ・レクサス車)によると、世界販売台数は46.3%減の42万3千台と、単月ベースで過去最低となった。
【出典】日本経済新聞 トヨタ、4月世界販売46%減 コロナ響き単月過去最低 ※太字は著者
そんな危機的状態の車業界でしたが、10月頃から需要が急回復しました。
トヨタ、2020年10月のグローバル販売・生産が2ヶ月連続で前年超え
10月単月は、主に米国、中国などが牽引し、前年超えの前年比約108%
【出典】トヨタ自動車 販売・生産・輸出実績
日本電産も20年10月~12月は、過去最高の成績となるくらい急回復しています。
また産機なども徐々に需要が回復し始めました。
需要が急回復したのは、「中国の影響が大きかった」です。
中国はコロナからの復活が一番早く、市場の回復も早かったです。
中国市場の恩恵で、世界の製造業も急回復し始めました。
2020年は巣ごもり需要で、PC・エアコンの需要が好調
2020年のコロナウイルスの感染拡大は、僕たちの生活様式を大きく変えました。
世界中で「テレワーク:在宅勤務」の働き方が急速に広まりました。
そしてテレワークの普及に伴い、巣ごもり需要が増えました。
・在宅勤務に必要なPC需要
・家の生活を快適にするエアコン需要
PCやエアコンなどは、コロナ禍だからこそ需要が伸びました。
日本電機工業会が25日発表した2020年の白物家電の国内出荷金額は、前年比1.0%増の2兆5363億円となった。消費税増税前の駆け込み需要があった1996年以来24年ぶりの高水準。新型コロナウイルス流行に伴う在宅時間の増加で巣ごもり需要が盛り上がり、家庭用エアコンと空気清浄機の出荷台数は過去最高だった。
【出典】jiji.com 20年の家電出荷、24年ぶり高水準 エアコン、空気清浄機好調 ※太字は著者
パソコン(PC)市場の回復が鮮明になっている。米調査会社IDCがまとめた2020年の世界出荷台数(速報値)は前年比13%増の3億260万台。新型コロナウイルスの影響で広がった在宅勤務や遠隔学習により、6年ぶりに3億台を上回った。
【出典】日本経済新聞 PC出荷、6年ぶり3億台 AMDのCEO「21年も需要拡大」
一時期車の生産が止まったのは、「PC・民生などにモノを取られたから」と言われています。
その後は、車への割り振りにより世界的に半導体がひっ迫するようになりました。
米国による中国SMICへの制裁影響
2020年9月、半導体業界に大きな影響を与える政策が実施されました。
米国が、中国の半導体前工程受託メーカーである「SMIC」へ制裁を実施しました。
米商務省が中国半導体受託生産の中芯国際集成電路製造(SMIC)に米国企業などが特定製品を輸出する場合に、事前に同省の許可を得るように求めていることが26日、分かった。英フィナンシャル・タイムズ(FT)など複数の欧米メディアが報じた。輸出許可制になれば、SMICの生産に支障が出るのは避けられない。
【出典】日本経済新聞 米、中国半導体SMIC向け輸出を許可制に
そして2020年12月に米国政府は、SMICへの「禁輸措置」を取りました。
アメリカ商務省は12月18日、アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断した企業等を列挙した「エンティティー・リスト」に、中国の半導体大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)を追加すると発表した。
【出典】東洋経済ONLINE 米政府、中国の半導体「SMIC」に禁輸制裁を発動
この結果、SMICは設備投資ができなくなりました。
需要の急回復に追い付かず、SMICが受注できない分が「TSMC、UMC」などの前工程受託メーカーに流れました。
車の需要回復で忙しかった事に加えて、SMICの受注が降ってきた事で、TSMCなども完全にキャパオーバーになりました。
・米国政府がSMICに制裁
・SMICが設備投資できず、キャパオーバー
・SMICの受注が加わり、TSMC、UMCなどもキャパオーバー
旭化成延岡工場の火災影響
2020年10月に発生した旭化成延岡工場の火災は、半導体業界に大きな影響を与えました。
延岡工場の火災影響は甚大で、復旧まで1年以上かかることが分かりました。
さらに延岡工場では、各種カスタム半導体を作っており、代替メーカーもすぐに見つからない状況でした。
そして旭化成が作っていた半導体の一部は、前工程受託メーカーへ流れ、市況のひっ迫に貢献しています。
一見関係ないと思われた旭化成の火災が、実は間接的に半導体の市況ひっ迫に影響を与えていたのです。
世界の半導体市場は年々伸びている
でも需要が急に増えたといっても、一時的なものじゃないの?
少し経てば落ち着くのでは?
実は、半導体の市場は年々増えております。
車の電動化や5G需要など、今までよりも半導体の使う数が圧倒的に増えてきています。
半導体メーカーは、旺盛な需要に対応すべく毎年設備投資をして何とか対応していました。
しかし、コロナ禍で減少した需要が急回復したことで、製造が追いつかなくなってしまいました。
そもそも半導体のリードタイムは、3か月くらいかかります。
急に増えても対応できず、バックオーダーを抱える事となってしまいました。
また車は、旧プロセス品(最先端の微細化プロセスでは無い製品)を使っています。
一方TSMCは、最先端プロセス(1桁nm品)に投資を集中させており、旧プロセスの設備投資はあまりしていません。
その結果、車の需要とTSMCの需給にギャップが生まれ、いつまでも供給が追い付かない状態になりました。
結局このひっ迫はいつまで続くの?
5つの要因が重なって市況がひっ迫しているのは分かったよ。
でもこの状態はいつまで続くの?
これはいろんな人が色々と考えています。
①21年8月頃に在庫が行き渡たり、落ち着く
②年内は需要がひっ迫する
③21年度はこのままの状態が続く
中国は手配を積み増すのも早いですが、手を引くのも早いです。
個人的にはダブル、トリプル手配が一巡する8月頃にいったん落ち着くのでは?と思っています。
(現場で働く人の希望的観測かもしれません笑)
一方ルネサスの柴田社長は、21年の後半まで続く可能性を指摘しています。
ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長は、世界の車載向け半導体の需給バランスは、今期(2021年12月期)の下期まで「タイト」な状態が続く可能性があるとの見通しを明らかにした。主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)では最先端製品の生産ラインの稼働率が実質100%超の水準に達しているという。
【出典】Bloomberg ルネサス社長、世界の車載半導体不足が年後半まで続く可能性を指摘
予想してもあんまり意味ないので、資材部員は最悪のケースでも対応できるようにしておくべきですね。
まとめ:2021年はモノ確保の年!
本記事まとめとして、半導体不足になっている原因を再掲します。
・20年10月以降、各分野の需要が「急回復」している(車・産機など)
・20年は巣ごもり需要で、PC・エアコンの需要が好調
・米国による中国SMICへの制裁影響
・旭化成延岡工場の火災影響
・世界の半導体市場は年々伸びている
年明けからの半導体ひっ迫は、これらの要因が重なって発生しています。
滅多にない物取り合戦になっています!
バイヤーはこういう時が見せ場です。
社内関係者をリードして、モノ確保に奔走しましょう!
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
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