こんにちは、コロスケです。
今日は電子部品の代表選手であるコンデンサ、その中でも積層セラミックコンデンサ(MLCC)について解説していきます。
10年ほど前まではMLCCは、供給・価格が安定しておりました。そのため、MLCCは電子機器の製造メーカーで必ず使われているキー部品であるにも関わらず、そこまで注目されない地味な存在でした。
それがここ数年、状況が一変しております。
供給のひっ迫と生産中止対応で電子機器を作っている製造メーカーは2年前からMLCCの調達に苦労する状況が続いています。
資材歴10年の現役資材部員である僕が、MLCCは今どうなっているのか、何が問題なのか、今後どうすれば良いのかを詳しく解説していきます。
皆さんのMLCCに関する疑問を解決していきます。
尚、2020年以降のMLCC需要予測が知りたい方は以下の記事をご覧下さい。
MLCC(積層セラミックコンデンサ)の供給不足を解説【村田製作所】
MLCCの供給問題は、需要の急速な拡大に供給が追い付いていないことが原因です。人気の限定品が販売されたりすると、なかなかモノが手に入らないですよね。まさに同じ状況となっております。
そしてこの問題の主役は村田製作所です。世界で多くのシェアを獲得している村田の動きに大きく影響を受けます。僕たち資材部員もMLCCの環境を把握する上で村田製作所の市場での動き、投資状況などの情報を仕入れていくことが非常に重要です。
そもそもコンデンサ・MLCCとはどういったものなのか?
そもそもコンデンサ(キャパシタも同じ意味)はどういったものなのでしょうか。
コンデンサは電気を蓄えたり放出したりする電子部品です。
村田製作所HP https://www.murata.com/ja-jp/campaign/ads/japan/elekids/compo/capacitor
直流を通さないで絶縁するはたらきもあります。
電子回路では必ず使うと言って良いほど、電子機器に欠かせない部品です。
ここに書いてあるように電子機器には必ず使われるものです。コンデンサには、ノイズを取り除いたり、電圧を安定させる働きがありますが、とりあえずは電子機器には必ず使われる部品と覚えておけばOKです。
次に積層セラミックコンデンサ(MLCC)です。
コンデンサはアルミやプラスチックフィルムなどで出来ていますが、MLCCはセラミックを積層(重ね合わせて)作られたコンデンサです。
誘電率の高いセラミックスを使っています。小型で熱に強く、高周波の回路でも使えます。
村田HP https://www.murata.com/ja-jp/campaign/ads/japan/elekids/compo/capacitor
MLCCはとても小さく1005サイズと呼ばれるものは、「縦1.0mm、横0.5mm」の大きさです。米粒よりずっと小さいので息を吹きかけたら飛んでいってしまうくらいの小ささです。
そんなに小さい部品なんだね
今MLCCに何が起きているの?
MLCCは世界的に需要に供給が追い付いていない状況となっております。その原因は以下の通りです。
・スマホの急速な普及
・自動車の電装化(EV(電気自動車)など)
・IoT
ご存知の通り、スマホはこの10年間で急速に普及しました。僕が会社に入った2008年はまだガラケーでした。それが10年後にはみんなスマホを当たり前に使うようになりました。
この流れは日本だけでなく、世界中で広がっています。一時期よりも成長のスピードは鈍化しましたが、それでも新興国中心にスマホ市場の拡大は続いています。
スマホ以上に大きなインパクトを与えているのが、自動車の電装化です。
昔と比較すると、自動車に搭載される電子機器が増えてきております。それに比例して自動車に搭載されるMLCCも大幅に増えております。
その結果、現在のMLCCは以下の状況に陥っています。
・世界的な供給ひっ迫(MLCCが購入できない)
・大きいサイズの製品の生産中止
18年度は世界的に供給がひっ迫し、MLCCが入手できない状況が続きました。その結果、MLCC偽物を販売する悪徳業者も出てきております。(今まではMLCCの単価は安く模造するメリットが無いと言われておりました)
そして、供給ひっ迫に輪をかけて問題となっているのが、大きいサイズの生産中止です。
どうしてMLCCを作っているメーカーは大きなサイズの製品をこのタイミングで生産中止にするの?
答えは、大きいサイズの製品は生産効率が悪く、流通量が徐々に減ってきているからです。
MLCCはサイズによって生産できる量が変わります。
大きいサイズですと、1枚のセラミックシートから取れる量は少ないですが、小さいサイズのMLCCの場合、1枚のセラミックシートから取れる量は多くなります。(つまり小さいサイズの方が生産効率が良い)
そのため、MLCCメーカーは大きいサイズの生産をやめることで、MLCCの全体の生産量を増やそうとしています。
また、スマホ向けMLCCは0603サイズ以下の目にも見えないような小さいサイズを使うなど市場のトレンドも小型化へと進んでおります。
つまりMLCCメーカーは、供給がひっ迫したため、供給量を増やす手段として大きく生産効率の悪い製品の生産中止に踏み切ったのです。
でも何でMLCCだけこんな大きな問題になっているの?他の部品と比較して何が違うの?
MLCCがここまで大きな問題となっている理由は、MLCCが寡占化された市場であることが挙げられます。他の部品と比べても世界的にMLCCを製造しているメーカーは少ないです。
そのため、ある1社(村田)の供給で問題が発生してしまうと、他のメーカーで補うことが出来ずに、世界的な供給問題となってしまったのです。
MLCCは今後どうなるの?
MLCCは現在供給より需要が多い状況となっております。
これは売り手有利の市場です。そのため、今後は買い手よりも売り手であるMLCCメーカーの意向に沿って物事が進んでいきます。具体的には以下の流れとなると思われます。
・0603など小さいサイズが市場の一般になる
・そこまで小さいサイズが要らない買い手もそれに従う必要がある
基本的に0603サイズ以下の小さいMLCCは、スマホなど一部の小型化が求められる分野には需要があります。
一方で、そこまで小型化が求められない分野(家電や産業機器など)では小型化の需要はそこまで大きくありません。
むしろ小さいサイズのMLCCを実装する(基板に張り付ける)のは難しく、各企業は小型化に合わせた実装技術の確立が求められるようになります。
今まで電子部品の主役では無かったMLCCが、売り手有利の市場状況を反映し、初めてMLCCをベースに基板設計を考える時代がやってきています。
最後に
MLCCに限らず調達品の市場動向は、買い手と売り手の需給バランスによって決まります。
今までMLCCの需給バランスは安定していましたが、車のEV化、スマホ、IoTなど新たな市場が生まれたことで、その需給バランスが崩れ、売り手有利の市場環境へと変化しました。
資材部員は常に製造メーカーの世界シェアや使用用途など世界の市場動向を注視し、需給のバランスをチェックしていく必要があります。
そして、何より大事なことは問題が起きる前にBCP(Business Continuity Plan)対策を取ることです。現在BCPは製造メーカーでは一般的な考え方になっていますが、それでもまだ完全にBCPの考え方が完全に浸透しているとは言えません。
備えあれば憂いなしです。自分の調達品のBCP状況を確認してみましょう。
また、BCPって何?という方向けの記事もありますので、気になる方は以下記事をご覧下さい。
MLCCの調達環境は今後も目が離せません。
資材部門はこのように、調達に関する色々な取り組み・調査を行っております。この記事を通じて資材の仕事をより深く知ってもらえると、とてもうれしいです。
■2020年度以降のMLCCの需要予測
コメント