こんにちは、コロスケ( Corosuke blog)です。
この記事では、ダイセルミライズの不適切行為とUL取消について解説します。
2022年7月11日、ダイセルミライズが第三者認証で不適切な行為があったことを発表しました。
この度、当社が販売する樹脂製品の一部において、米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories Limited Liability Company(以下「UL」)の認証に関し、不適切な行為(以下「本件不適切行為」といいます。)が判明しました。お客様をはじめ関係者の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。
【出典】ダイセルミライズ_当社製品における第三者認証に関する不適切行為について
今回はダイセルミライズの不適切行為の概要と、今後の対応について解説していきます。
調達に関係する方に役立つ情報をお届けいたします。
ダイセルミライズ樹脂がUL取消【不適切行為の詳細と対応解説】
今回の不適切行為の概要は、以下のとおりです。
①ULの定める難燃性規格に関するフォローアップ工場試験の際に、指定されたロットとは別の試験片を作成し提出していた
②登録時の組成を一部変更した製品を、ULへの申請を行わずに製造・販売していた
分かりにくいので、概要を詳しく解説していきます。
また、買い手側が取るべき対応もご説明します。
(ダイセルの公式発表はこちらから)
UL規格とは
ULとは、Underwriters Laboratoriesの略です。
樹脂材料の「難燃性:燃えにくい・溶けにくい」の基準を作っているアメリカの認証機関です。
樹脂材料は、UL規格に従って難燃性の実力を確認する事が一般的です。
以下の通り、カタログ上も「UL規格」が記載されます。
UL規格をカタログに謳う場合は、ULが定める難燃性の試験に合格する必要があります。
こんな感じで、樹脂サンプルに火を付けて難燃性を確認します。
【不適切1】指定されたロットとは別の試験片を作成
UL検査は、フォローアップと呼ばれる定期確認試験があります。
ULの検査員がランダムに指定するロットで、上記試験を行います。
この試験で不合格になると、ULは取消となります。
試験で不合格になると出荷に影響が出てしまうので、ダイセルミライズは指定されたロットとは異なる試験片で試験を受けていました。
(異なる試験片に難燃剤を多く入れる事で、確実に試験が合格になるようにしていた)
要は「替え玉受験」みたいなものです。
確実に合格できる試験片を提出しており、それがULに不適切行為と判断されました。
そしてダイセルミライズで改めてUL試験をしてみた結果、実はカタログ上で規定しているスペックに満たないグレードも存在しておりました。
(具体的な対象は、こちらのリストを参照)
【不適切2】登録時の組成と異なる認証登録製品の製造・販売
樹脂は、顧客の要望や品質向上を目的に、グレードの組成を変更する事があります。
(例えば、若干組成を変えた「A」グレードを「A’」グレードとするなど)
ULの規定では、組成が変わった場合は「改めてULへ申請が必要」となります。
しかしダイセルミライズは、組成が大きく変わらなければULへの申請は不要と考えていたようです。
今回、上記【不適切1】をULに報告した際に、この事象も不適切行為として判断されました。
ULが取り消しになる
今回の不適切行為1・2に該当するグレードは、ULの判断により「ULが取り消される」事になりました。
本件についてULに報告した結果、下記製品の一部のUL認証登録が取り消されることになりました。登録が取り消しになる製品については、認証の再登録および代替品の確保などにより、お客様のご要望に応じた供給を実施してまいります。
【出典】ダイセルミライズ_当社製品における第三者認証に関する不適切行為について
ULが取り消されても、ダイセルミライズは樹脂の供給は従来どおり継続できます。
しかしダイセルミライズは、樹脂をULグレードとして出荷する事ができなくなります。
(UL取り消しされた日以降に出荷された樹脂は、ULグレードでは無くなる)
現時点では、ULが取り消される日は確定しておりません。
確定後に公式サイト上で公表されると思われます。
影響がある方は、定期的に公式サイトを確認しましょう。
バイヤーが取るべき対応
今回の不適切事例によってバイヤーが取るべき対応は、以下の2つです。
①購入してる樹脂の難燃性に影響はないか確認する
②ULの取消による影響が無いか確認する
まず今回は再検査した結果、カタログで謳っている難燃性を満たさないグレードが複数存在します。
もしそれらのグレードを買っている場合は、樹脂を使う製品の機能性能に問題が無いかを確認する必要があります。
次に、ULが取り消される事による影響です。
製品としてUL製品!と謳っていたり、製品の仕様書上に「UL」と謳っている場合は、それらの表記が使えなくなる可能性があります。
まずは自社製品でダイセルミライズの樹脂が使われているかを確認しましょう。
その上で使用している場合は、設計者に上記2点の対応を確認しましょう。
まとめ:ダイセルミライズ樹脂がUL取消
今回の不正内容のまとめです。
①ULの定める難燃性規格に関するフォローアップ工場試験の際に、指定されたロットとは別の試験片を作成し提出していた
②登録時の組成を一部変更した製品を、ULへの申請を行わずに製造・販売していた
→不正によりUL規格が取り消される
不適切事例が起きると大変ですが、素早く適切に対処していきましょう!
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