この記事は以下の方向けに書いています。
・マルチファブ・マルチソースとは何か知りたい
こんにちは、コロスケです。
今日はマルチファブ・マルチソースとはどういったものか、についてまとめていきます。
製造業でのモノ作りにおいて、安定調達・BCPの重要性は日に日に増しています。
最近打合せや各種資料にも、BCPという言葉が良く出てきます。
マルチファブやマルチソースは調達品におけるBCPの対策の一つなのですが、最初は聞いても良く分からないですよね。
今回は調達品におけるBCPにおいて、特に重要な概念であるマルチファブとマルチソースについて詳しく解説していきます。
僕は資材歴10年の現役資材部員で、実際に2011年のBCPの重要性が叫ばれるようになった頃からBCP対策としてマルチファブ・マルチソースへの取り組みに関わっています。
マルチファブ・マルチソースとは何ぞやという資材調達・購買部員へ有益な情報を提供致します。
マルチファブ・マルチソースとは何かを資材部員が解説【BCP対策】
マルチファブ・マルチソースの意味は以下の通りです。
調達品におけるBCP対策としてあげられるのが、このマルチファブとマルチソースです。
いずれも何かトラブルが発生し、調達品の生産が停止した場合でも調達品の供給が続けられるようにする体制のことを言います。
マルチファブとマルチソースに加えて、計画的な在庫保有という3つが資材調達におけるBCP対策となります。
この3つの対策を一つずつ解説していきます。
資材調達・購買部門にBCP対策が必要な理由
そもそも何故調達品でBCPの対策が必要なのでしょうか。
昔は調達品のBCPは意識されていませんでしたが、2011年の震災やタイの洪水で調達品が長期間入手できない問題が発生しました。
この反省から、調達品でのBCP対策が本格的に考えられるようになりました。
資材部門におけるBCPについては以下の記事に詳しくまとめていますので、ご覧下さい。
調達品のBCPは、2011年頃から考えるようになったんだね
マルチファブとは何か
マルチファブとは、取引先が同じ部材を複数の工場で作れるようにすることです。
複数の工場を認定することで、一方の工場でトラブルがあっても、もう一方の工場から調達を継続することができます。
マルチファブの前提として、同じメーカーが複数工の工場を保有し、同一部材を複数の工場で作れる体制を整えることが必要です。
複数の工場があると何かあった時にも安心だね
でも実は、マルチファブで工場を複数保有するのは結構ハードルが高いと言われているんです。
ハードルが高いと言われている理由は以下の通りです。
・取引先が工場を2つ以上持つ必要がある
・同じ部材を複数の工場で作れる体制を構築する必要がある
・同じ部材を複数の工場で作ると、効率が悪いことがある
そもそも工場を2つ持つということが、取引先によってはとてもハードルが高いです。
仮に1つしか工場が無い場合、マルチファブは成り立ちません。
また工場を2つ以上持っている場合も、同じ部材を作るためには設備や型などを複数保有するなど、モノ作りの体制を構築する必要があります。
そのため、一つの工場で一括して生産する場合と比較して、生産効率が落ちるケースがあります。
このようにマルチファブを構築するためには、生産の効率を度外視する必要が出てくる可能性があります。
BCPのためという理由でマルチファブを導入するのは、難しい場合を多いのです。
マルチソースとは何か
マルチソースとは、複数のメーカーから同じモノを調達できる体制を作ることです。
どちらか一方のメーカーでトラブルがあり生産が停止しても、もう一方のメーカーで生産を続けることで、供給を継続することが出来ます。
マルチソースが出来る前提条件として、複数のメーカーが同じ部材を作る必要があります。
そのためマルチソースが出来る品目は、チップ抵抗、MLCCなど規格化された汎用品であることが多いです。
そして、マルチソースを構築するのもハードルが高いと言われております。
理由は以下の通りです。
・複数のメーカーで同一部材を作っていないケースがある
・両方を使えるように認定するのが大変
・基板などの特注品の場合、両方で同じモノを作ってもらうのは非効率的
先ほど申し上げたようにマルチソースは、規格化されている汎用品などではやりやすいです。
一方で、規格化されていない場合、複数のメーカーが同じモノを作っていないケースが多いです。
そういったケースではマルチソース認定が出来ないことがあります。
また複数のメーカーが同一部材を作っている場合でも、両方の部材を使えるように認定する作業が発生するため、手間や時間がかかるケースもあります。
尚、基板のようにカスタム品を複数社認定しようとすると、初度費用が倍必要になるなど、あまり効率的では無いことが多いです。
必ずしも全部の部材でマルチソースが出来るわけじゃないんだね
計画的に在庫を保有する
マルチファブとマルチソースが出来ないケースでは、どのようにBCP対策を講じれば良いのでしょうか。
そのような場合には、計画的に在庫を多く保有することが考えられます。
地震など災害が発生してから、復旧するまでの期間を想定し、その間必要な在庫を計画的に保有します。
何か問題が発生しても、復旧までの期間は在庫を消化することで、生産を維持することが出来ます。
在庫保有するなら簡単だね
確かに在庫保有するのは簡単ですが、別の問題が発生します。
それは在庫です。
部材を買うということは、お金を取引先に支払うことを意味します。
在庫はそれ自体では、何もお金を生み出しません。
取引先に支払った部材の費用を、金融機関からお金を借りている場合は、その金利費用が会社にとって損となります。
そのため経営上は出来る限り在庫は少なくすることが求められています。
在庫を多く保有するということはこの原理に反することから、なかなか在庫を多く保有するのも難しいんです。
うーん、在庫も保有するのもダメだったら、BCP対策を構築するのはとても難しいよね・・・
そうなんです。
BCP対策の重要性は製造業の人であれば、みんな理解しています。
ただ色々な課題があることから、簡単にはBCP体制を構築することは出来ないのです。
資材部門が考えるべきマルチソース、マルチファブ
今までご説明してきた通り、BCP対策であるマルチソースやマルチファブにはお金がかかります。
特にマルチファブは取引先で対応して頂く必要があることから、自分の会社だけでは達成することが出来ません。
ただ思い出してほしいのは、震災やタイの洪水などモノが調達できなくなるとモノ作りに支障が出ます。
上記トラブルが発生した時、みんな価格よりも調達を優先していました。
つまり本質的には価格よりも調達が大事なのです。
(モノ作りをするためには部材が無いと始まらないですよね)
調達部材の調達責任を負っている資材部門がすべきことは、価格より調達継続性の方が大事であることを関係者に理解して頂くことです。
平時は、モノが手に入らなくなることは意識しづらいですが、価格よりも調達性の方が重要ということを継続的に伝えることが資材部門の役割でもあるのです。
「調達部門」というからには、モノを入手することがとても大事だよね
まとめ
マルチファブ・マルチソースについてのまとめです。
マルチファブ:同一メーカーの複数の工場で同じモノを作れる体制を作ること
マルチソース:複数のメーカーから同じモノを調達できる体制を作ること
資材調達におけるBCPの基本は、このマルチファブとマルチソースです。
資材調達部門として、価格にも増してマルチファブ、マルチソースの取り組みが大事になってきます。
マルチファブ、マルチソース、いずれも費用や手間がかかることから、なかなか進展しないのが実情です。
日々原価低減活動を進めている製造業にとって、なかなか費用が多くかかる選択肢を取ることは難しいです。
しかしながら、何かあってからでは遅いので、普段から継続的にBCPの大切さを社内関係者に理解してもらうことが重要です。
いつくるか分からない災害・トラブルに事前に備えていきましょう!
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
良かったら、他の記事も読んでみて下さい。きっとあなたの役に立つ情報があると思います。
コメント