こんにちは、コロスケです。
今日は、ミネベアミツミによるエイブリック買収について解説していきます。
2019年12月17日にミネベアミツミがエイブリックを買収することを発表致しました。
ミネベアミツミ株式会社は、2019年12月17日付の取締役会決議により、以下のとおり、エイブリック株式会社(以下、「エイブリック」)の株式を取得し(以下、「本株式取得」)、子会社化することについて決定し、2019年12月17日付で株式会社日本政策投資銀行及びセイコーインスツル株式会社と本株式取得に係る株式譲渡契約(以下、「本株式譲渡契約」)を締結致しましたので、お知らせ致します。
https://www.minebeamitsumi.com/news/press/2019/1198208_12980.html
エイブリックは元々、セイコーインスツル(SII)の半導体事業部でしたが、2回の社名変更を経て、今回ミネベアに売却となりました。
今回は、エイブリック買収の詳細について詳しく解説していきます。
・セイコーインスツル(SII)の半導体事業の経歴が知りたい
・ミネベアミツミによる買収の背景が知りたい
・両社の半導体事業の業績を知りたい
上記疑問を解決していきます。
ミネベアミツミがエイブリックを買収!【セイコー半導体の経歴解説】
・アナログ半導体に注力するミネベアがエイブリックを344億円で買収
・セイコーインスツル⇒セイアイアイ・セミコンダクタ⇒エイブリック⇒ミネベアという変遷
・今後ミネベア・エイブリックは、1000憶円への事業拡大を目指す
セイコーインスツルの半導体事業は社名変更を伴う事業変更が何回か起きております。
そのため元々エイブリックは、どこの会社だったの?という方も多いと思います。
ここではエイブリックがミネベアに買収されるまでの経緯を整理していきます。
ミネベアミツミとエイブリックの半導体事業
ミネベアミツミの半導体事業
ミネベアミツミには、「機械加工品・電子機器・ミツミ事業」の3つのセグメントがあります。
その内、半導体はミツミ事業で管轄しております。
半導体事業の売上は18年度実績で、約230憶円となっております。
半導体事業として、「センサーIC、電源IC、リセットIC」などを主に製造しております。
エイブリック半導体事業
エイブリックは、18年度の売上が328憶円、営業利益が41億円(12.5%)となっております。
過去3年間は安定的に利益が出ている優良企業であることが分かります。
セイコーインスツル半導体の経歴
次にエイブリックの前身である、セイコーインスツル半導体について説明致します。
セイコーインスツル(SII)半導体事業(1968年~)
セイコーインスツル(SII)は、1937年に設立。
1968年から半導体の開発をスタートしました。
元々は、アナログクォーツ用のICからスタートしましたが、現在ではセンサーICや電源IC、EEPROMなど、多くの半導体を製造・販売しております。
エスアイアイ・セミコンダクタ(2015年~)
その後、2015年9月にセイコーインスツルの半導体部門が、別会社として独立しました。
その時の社名が、エスアイアイ・セミコンダクタです。
その後2016年1月には、日本政策投資会社(DBJ)の出資を受けました。
出資比率は、セイコーが60%、日本政策投資銀行 (DBJ) が40%です。
元々、SIIの半導体事業は適正な利益を出しておりました。
しかし、アナログ半導体市場の中ではSIIの規模は小さく、今後大きく成長するためには、大きな投資が必要な状況でした。
SII半導体は、車載などに強く、セイコーの本業とはシナジーが少ないと判断されたようです。
その結果、半導体事業は、セイコーグループとしてでは無く別会社として歩みを進めることになりました。
日本政策投資銀行 (DBJ) は、事業再編を前提とした一時的な出資で参加しておりました。
そのため、日本政策投資銀行 (DBJ) が参加した時点で、別の会社への売却が想定されていました。
エイブリック(2018年~)
2018年1月にSIIとDBJの出資比率が見直されました。
SIIが30%、DBJが70%の出資比率となり、社名もそのタイミングでエイブリックへ変更されました。
新社名のエイブリック=ABLICは、ABLE(〜ができる)とIC (IntegratedCircuit) を組み合わせた造語で、半導体技術で不可能を可能にするという意味を込めています。
https://www.ablic.com/jp/semicon/corp/
徐々にSIIの比率を下げ、売却先の検討をすすめていたものと思われます。
ミネベアミツミ(2020年~)
そして2019年12月にエイブリックがミネベアミツミに売却されることが発表されました。
今後は、ミネベアミツミの傘下で半導体事業を進めていくことになります。
ミネベアミツミによるエイブリック買収は成功するのか?
売却で心配されるのが、エイブリックとミネベアがシナジー効果を発揮できるか?ということです。
・ミネベア⇒規模拡大・車載医療の販路確保
・エイブリック⇒アナログ半導体業界での地位向上
今回は、アナログ事業でのビジネス拡大を目指す両社の意図が合致しており、シナジー効果がありそうです。
ミネベアミツミによる買収の目的
今回のミネベアによる買収の意図を詳しく分析していきます。
ミネベア中核事業であるアナログ半導体の強化
ミネベアは自身の事業の内、中核となるコア事業を8つ選定しております。
当社は、超精密加工技術や大量生産技術等の当社の強みを発揮でき、且つ簡単に無くならない製品をコア事業「8本槍」として位置付けると共に、これらを相合(そうごう=相い合わせる)することにより新たな価値をお客様に提供していくことを基本戦略としております。
https://www.minebeamitsumi.com/news/press/2019/1198208_12980.html
8本槍とは具体的には以下の通りです。
ベアリング
モーター
アクセス製品
センサー
コネクタ&スイッチ
電源
無線&通信&ソフトウェア
アナログ半導体
ミネベアミツミの中では、アナログ半導体は中核事業の一つとして位置づけられています。
車載・医療分野のノウハウ・販路確保
エイブリックは車載医療関係などに強みを持っております。
買収によって、ミネベアミツミには無いノウハウや販路を獲得することが出来ました。
当社は、本株式取得を通じて、産業・住設機器市場向けに加えて医療機器向けの高付加価値製品の拡販、カーインフォテインメント*5市場でのシェア拡大への取り組みを一層強化し、当社の半導体事業の規模拡大とアナログ半導体市場での地位向上により、日本の半導体産業の再成長に寄与してまいります。
https://www.minebeamitsumi.com/news/press/2019/1198208_12980.html
前・後工程、2工場化による安定供給体制
今回の買収によりミネベアは前工程・後工程共に、2工場化が実現できます。
両工場での相互生産など、安定供給という観点でメリットがあります。
ものづくりの面では、両社の前工程・後工程工場での相互生産と生産技術・ノウハウの横展開により品質・生産性の向上とBCP対応力の強化が図れます。
https://www.minebeamitsumi.com/news/press/2019/1198208_12980.html
ミネベア・エイブリックの今後の売上見通し
今回の買収により、ミネベアの半導体事業の売上は、約560憶円まで倍増します。
(ミネベア230憶円、エイブリック330憶円)
時期こそ未定ですが、今後は合併によるシナジー効果を出すことで、売上1,000憶円、利益10%の会社を目指します。
資材部門が対応すべきこと
今回の合併は2020年7月頃になると言われており、直近での動きは不要です。
資材部門が今後直面する課題を2つ説明致します。
不採算・類似製品の統廃合
今回の合併は追い込まれた救済合併ではありません。
そのため合併後、すぐに大きな動きは無いものと予想されます。
しかし、将来的には2社間での業務効率化が必要になってきます。
領域が被る製品・シリーズでの統廃合が今後起こる可能性があるので注意が必要です。
発注先変更手続き
今後はエイブリックからミネベアへ注文を変更する必要が出てきます。
手配情報の切り替えなど、今後事務手続きが必要となります。
エイブリックの担当者から連絡がくると思いますので、連絡が来次第、対応していきましょう。
まとめ
・アナログに注力するミネベアがエイブリックを買収、アナログ事業を拡大
・シナジー効果があり、ビジネス拡大が期待できる
・買収により、不採算・類似製品の統廃合の可能性がある
セイコーグループから切り離されたエイブリックは、ミネベアミツミの傘下に入ることになりました。
お互いにシナジー効果が期待できるので、今後の両社の活躍に期待したいです。
個人的には、ミネベアのコメントにあった「日本半導体産業の再成長」を是非成し遂げてほしいと思っています。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
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