こんにちは、コロスケ( Corosuke blog)です。
2020年の10月頃から、部材の調達難が続いております。
もう1年半くらいこの状況が続いており、疲弊しているバイヤーの方も多いのでは無いでしょうか?
ですが、最近になって風向きが変わってきたと感じるようになりました。
今回は最前線で調達をしている現役バイヤーである著者が、最新の調達環境・今後の予想をまとめました。
調達で苦労している方は参考になるかと思いますので、ぜひ最後までご覧下さい。
生産調整の足音が聞こえている【2022年末に調整局面がきそう】
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最近の市況を踏まえて、今後の調達環境を予想しました。
最近の経済状況🤔
— コロスケ@現役資材部員 (@Corosukeblog) June 15, 2022
・ウクライナロシア戦争長期化
・中国ロックダウンによる景気後退
・米金利引き上げによる景気後退
・車の需要減少
現在景気が良いのは産機くらいですかね。近いうちに調整局面が来て、莫大な在庫が積み上がり、キャンセル交渉祭りになる未来が見えてきており、非常に怖いです。
製造業はこれまで、アクセル全開でした。
モノの確保を最優先にした結果、過剰とも言える発注を続けております。
ですが先行きは、徐々に悪化しそうです。
今後はアクセル全開のツケが来るのでは無いかと予想しています。
需給逼迫のピークを超えた感じがする
2021年末までは、全ての部材が「モノ不足」の状態でした。
半導体だけでなく、電子部品全般、樹脂材料などの原料系など、全ての需給が逼迫していました。
取引先は需要過多の状況を背景に、大幅な値上げやリードタイムの延伸を行いました。
・値上げしないと、受注は受け付けない
・値上げしても供給は約束できない
・リードタイムを突然延伸
・リードタイムを確保した確定注文が無いと納期は守れない
こんな感じで、あり得ないような条件で発注をせざるを得ない状況でした。
ですが、最近になってその流れが少し変わってきている事を感じています。
これまでは「全ての部材」が逼迫している感じでした。
しかし、最近は「特定の部材」が逼迫しており、他の部材は少し落ち着いてきた印象です。
一番大きい要因は、自動車の減産です。
日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車は、現在も部材不足に苦しんでおります。
直近でも、下方修正した数字から更に減産を余儀なくされております。
6月のグローバル生産台数は、85万台程度を見込んでおります(国内約25万台、海外約60万台)。年初に仕入先にお伝えした台数から、半導体不足の影響により、グローバルで10万台程度の見直しを行っております
【出典】トヨタ自動車_5月/6月国内工場の稼働および6月生産計画について
今回、6/6(月)週につきましても、上海でのロックダウンの影響により、国内工場の一部で稼働停止することを決定いたしました。
今回の追加稼働停止による影響台数は、約5万台です。今回の見直しにより、6月のグローバル生産台数は、80万台程度を見込んでおります(国内約20万台、海外約60万台)。
【出典】トヨタ自動車_6月 国内工場の稼働について
サプライヤー側の供給量アップと、需要の落ち着き。
この2つの影響で、徐々に需給環境が改善されている実感があります。
但し特定の半導体では、まだ需給環境が改善しておらず、厳しい状況が続いております。
中国上海に生産拠点がある部材は、特に厳しい印象です。
・全般的に徐々に需給は改善傾向にある
・但し特定の品目は現在も逼迫している
サプライチェーンに在庫が積み上がっている
2021年から部材逼迫が顕著になり、発注リードタイムも大きく伸びました。
リードタイムが伸びるという事は、基本的には多めに手配をかける必要があります。
この流れによって、徐々にサプライチェーンに在庫が積み上がり始めています。
現在は需要側も「一定の在庫数は必要」との認識になっており、適正な在庫は保有する方針の企業が大半です。
JITで在庫を持たない事で有名な自動車メーカーも、在庫を保有する動きに転換しています。
ですが、その在庫量が過剰になりつつあります。
倉庫スペースを圧迫する部材を中心に、納期延伸の動きが出始めています。
この流れが続くと、多くの部材で納期延伸=生産調整の動きが出てくる可能性がありそうです。
アメリカの景気が減速している
![](https://corosuke-blog.com/wp-content/uploads/2019/05/疑問-min.png)
でも、今の需要は旺盛だし、大きな調整にはならないのでは?
確かに目先の需要は旺盛です。
自動車、家電、産機など、多くの分野で「作りたいのに作れない」状況が続いています。
目先の需要が強いからこそ、各企業はアクセル全開を続けております。
ちょっとくらい在庫が増えたからと言って、アクセルを緩める状況には無いのです。
ですが、もっと大きい視点で見ると、状況は変わってきます。
世界最大の消費国であるアメリカでは、現在景気後退の足音が聞こえています。
アメリカは現在急速なインフレに悩まされています。
直近のインフレ率は、40年振りの「8.6%」となっております。
![【出典】investing.com_米CPIチャート](https://corosuke-blog.com/wp-content/uploads/2022/06/【出典】investing.com_米CPIチャート.png)
急速なインフレによって、市民の生活が苦しくなっています。
何とかこのインフレを抑えるために、現在急速なペースで利上げが進められています。
基本的に金利の引き上げは、景気にはマイナスです。
例えば、金利が上がると住宅ローン金利も上昇するので、家を買う人が減少します。
実際アメリカでは、住宅市場の急速な冷え込みが起きています。
また、ガソリン価格も高騰が続いております。
アメリカは自動車大国なので、ガソリン価格の高騰は消費マインドに悪影響を与えます。
こうした流れから、今後アメリカでは「景気が悪化する」との予想が出てきています。
もし今後アメリカの景気が悪化した場合、今までサプライチェーンに積み上げた在庫が長期に滞留する事が懸念されます。
納期延伸・キャンセルが起こり、多くの企業で生産調整祭りとなるかもしれません。
中国経済も厳しくなってきている
もう一つ世界最大の消費国である中国も、厳しい状況が続いています。
昨年2021年に中国政府は、不動産バブルの抑え込みを図りました。
その影響で、中国の不動産市場が急速に悪化しております。
中国大手不動産企業である「恒大集団」が債務危機に陥るなど、危機的な状況が続いています。
加えて2022年3月以降、深セン・上海でのロックダウンが消費を更に低下させました。
特に上海のロックダウンは、2ヶ月も続く異常事態となりました。
ロックダウン中、上海では全ての企業活動が完全に停止するなど、甚大な経済的ダメージを受けました。
今まで世界経済を牽引してきた中国ですが、今回は中国が景気を下支えするのは難しそうです。
生産調整局面で資材調達・購買部員がやるべき事は何?
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景気が悪化しそうなのは分かったけど、僕たちは何をすれば良いの?
生産調整局面で資材部員がやるべきことをまとめました。
・市況情報を頻繁に入手する(新聞・取引先情報)
・発注リードタイムの見直し
・必要に応じてキャンセル交渉
生産調整局面でも、資材部員がやるべきことはあまり変わりません。
淡々とやるべきことをやっていきましょう!
市況情報を頻繁に入手する
2022年6月時点では、急ブレーキをかける状況にはありません。
そのため現時点では、従来どおり長納期手配を続ける必要があります。
一方で、市況が変化してきたら、すぐに対応が必要になります。
市況の変化を素早く見極めて、適切な対応を取ることが必要です。
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具体的にはどうやれば、市況情報を入手できるの?
市況情報の入手方法は、主に2つあります。
・新聞、企業IRを読む
・取引先から生の情報を聞く
この中でも特に大切なのが、「取引先からの生の情報」です。
「最近どうですか?納期落ち着きましたか?」という話を聞くと、非常に貴重な情報を得られます。
直近でも「一部落ち着いてきた」という話を聞けるようになりました。
こういう最前線にいる営業担当の方の情報をヒアリングしていきましょう。
資材の付加価値の一つに「社外の最新情報を入手し、社内に共有する」という事があります。
今はアクセルを踏んでいますが、今後景気が悪化してきた時に早くブレーキを踏めるように資材が情報発信していくことが大切です。
発注リードタイムの見直し(短縮)
市況が緩む情報を入手したら、まずは発注リードタイムを見直しましょう。
現状、半導体電子部品は、半年~1年の納期設定となっております。
こうした設定を放置しておくと、自社の需要が急減した時に過剰な在庫を抱えてしまいます。
最新の市況に合わせて、発注リードタイムの見直しをしましょう。
具体的には取引先に「今のリードタイムはどのくらいですか?」と聞いて、それに合わせて短縮化しましょう。
基本的に、取引先は「リードタイムが長いほうが良い」と考えております。
そのため、放っておいてもリードタイムを短くするアナウンスはしてくれません。
資材が能動的に情報を取りに行く必要がある点に注意しておきましょう。
キャンセル交渉
僕の感覚ですが、1年以上の長納期で発注している場合、景気が悪くなると大量の過剰在庫が溜まってしまいます。
そのため、あまりにも在庫が溜まった場合、キャンセル交渉をする必要があります。
基本的には、確定注文したものを自社の都合で取り消すことはできません。
但し、状況によってはそんな事を言っていられないので、(しぶしぶ)資材部員はキャンセル交渉をする必要があります。
具体的な手順については、またキャンセル交渉が必要なフェーズになったら解説したいと思います。
まとめ:生産調整の足音が聞こえている
本記事のまとめです。
・需給環境が徐々に改善されつつある
・サプライチェーンに在庫が溜まってきている
・米中の景気後退の足音が聞こえる
→2022年末頃に生産調整となりそう
目先は引き続き調達難が続いております。
ですが、半年前と比べると徐々に風向きが変わってきている気がします。
僕は、生産調整は「2022年12月前後」かなぁと予想していますが、さてどうなるでしょうか?
市況の変化を早めに捉えて、適切な対応をしていきましょう!
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