値上げ交渉を成功させる5つの方法【現役資材部員が教えます】

資材業務について
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こんにちは、コロスケです。

今日は、価格交渉時に客先の資材/購買部員に対して値上げ交渉をする際のコツについて説明していきます。

営業部門と資材部門両方にとって、値上げ交渉はあまりうれしくない出来事です。資材部門にとっては、自分たちの材料費が上がってしまうため、何とか避けようと必死になります。営業部門にとってみると、成功すれば利幅は改善しますが、何度も客先に足を運び、要求されたことを検討するなど、非常に手間です。

今回は製造業の営業部門の方向けに、「値上げ交渉のコツ」を伝授いたします。

営業の方が交渉を有利に進めるためには、交渉相手の資材部員の考えを理解することがとても大事です。資材歴10年の現役資材部員である僕が、値上げ交渉時にどんなことを考えているのかがこの記事でわかります。

この記事を読んだ方の「値上げ交渉の苦労・疑問」を解消していきたいと思います。

 

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値上げ交渉を成功させる5つの方法

コツ5選

・自分(営業部門)の置かれた立場を明確にする

・期限を区切り、供給を人質にする

・相手(資材部門)が社内説得できる材料を提示する

・相手(資材部門)にも得点させてあげる

・丁寧に説明する(決して相手(資材部門)の怒りを買わない)

最短で値上げ交渉を妥結させるには、上記5つのポイントを理解することが必要です。どれかが欠けると交渉は失敗します(もしくは値上げできても遺恨を残します)。

自分の立場を把握した上で交渉をおこない、交渉後も今後の関係性を維持していくことが重要です。

一つずつ解説していきます。

 

自分(営業部門)の置かれた立場を明確にする

値上げ交渉するときは、事前に自分たちの状況を分析をすることが非常に重要です。決していきなり値上げの話を資材部門へ持っていてはいけません。最初にすべきは値上げする製品の立場を確認すべきです。

販売する製品は、以下の通り分類できます。

・値上げしても絶対に転注されないオンリーワンの製品(Easy)

・一定の期間で転注される可能性がある製品(Normal)

・容易に転注される場合がある製品(Hard)

自分が販売している製品が容易に転注されうるものなのかを確認しましょう。

Easyの場合、やり方さえ間違えなければ値上げは容易です。逆にHardの場合は、値上げのハードルはかなり高いです。転注されても最悪構わわない場合や、値上げしても市場価格より安いことがはっきりわかっている場合のみ交渉の見込みがあります。

Normalは、「値上げ額<切り替え費用(設計工数・切り替え品評価等)」の場合なら値上げできます。逆に切り替え費用が安い場合は、切り替えられるリスクが高まります。

ただ、客先も切り替えによる品質リスク(切り替えたことで不具合が発生するリスク)を考えますので、品質を重視する風土であれば、値上げ額が大きくても受け入れられる可能性が高まります。

 

まずは自分が販売している製品の状況を把握することが大事だね。

 

期限を区切り、供給を人質にする

日本の商習慣は、残念ながら買い手の方が立場が上のことが多いです。本来価格を決定する権限は販売側にあるはずなのですが、客先の資材からの了承が得られないと価格を変えられないケースがあります。

 

いっつも値上げを認めて貰えないんだよね・・・

 

ただ、「供給を人質」にすれば話は別です。値上げを認めないと供給しないと言われると資材部員は、ほぼ100%値上げを認めます。何故なら、資材部の一番重要なミッションは「供給を確保すること」だからです。

ただ「供給を人質」にすることは劇薬です。資材部員の喉元にナイフを突きつけて脅しているようなものなので、やり方を間違えると客先資材の反感を買います。

基本的にこの技を使うべきときは、相手の資材部員が「引き伸ばし戦法」を使うときです。返事をせずにをのらりくらりと時間を稼ぐのは、資材の常套手段です。期限を無視される場合に「のみ」用いるようにしましょう。

そして、供給を人質にとるときは相手の反感を買わないように細心の注意を払いましょう。このことについては、後半で詳しく説明いたします。

 

相手が理解ある資材部員であれば、この方法は使わない方が良いね

 

相手(資材部門)が社内説得できる材料を提示する

僕が長年資材部門を経験してきて思うことは、「営業の人は資材部門のことを全く考えていない」ということです。

資材担当者は、購入する製品に目標価格が割り付けられ、それに向けて活動しています。また、価格の妥当性については、自分の上長や社内の製造・設計部門に説明する義務を負っています。

資材部門が何故簡単に値上げを受け入れないかと言うと、「社内への説明がとても大変だからです」。これを逆から見ると「社内への説明さえできれば、値上げのハードルは低い」ということです。

資材部門が「価格の詳細を出してほしい」「どうして値段が上がったのか理由を詳しく説明してほしい」というのはこのためです。(値上げ根拠を準備せずに値上げ要請してくる営業の方がたまに居ますが、本気で値上げする気があるのかなと思ってしまいます)

値上げを要請するときは、セットで「資材が社内説得できる材料」を持っていきましょう。説得できる材料は具体的には以下の通りです。

・値上げした背景・理由

・値上げ額が妥当である根拠

値上げした背景・理由ですが、「社内の採算性改善」ではダメです。自分の苦しみを相手に押し付けているとしか思われません。僕が受け入れる理由は「物流費の上昇・原料費の上昇」など「そうだよね」と納得できるものです。

値上げ幅の妥当性ですが、原料費の上昇の場合、「原料を100g使っていて、1gあたり1円上昇したから、100円値上がり」そして「1gあたり1円の上昇は新聞に載っているなどウソではないです」というものが必要です。

 

こんな細かい内訳出せないよ・・・

 

ただ、資材部門からすると、「内訳も分からないのにどうやってこの値段を算出したの?」と思います。ウソは困りますが、比率計算や概算数値でも良いので根拠は頑張ってひねり出しましょう。

 

相手(資材部門)にも得点させてあげる

先ほどもお話ししましたが、資材のミッションは「適正な価格でモノを調達」することです。そのため、値上げを受け入れるということは、そのミッションが達成できないということになります。

この状態は、営業(WIN)、資材(LOSE)の関係です。なかなか資材は値上げ=負けを認めることはできません。

大事なことは、相手もこれなら仕方ないと思えるポイントを作ってあげることです。具体的には、以下の通りです。

・値上げの見積価格を下げる

・他の製品の値段を下げる

例を挙げると、100円のモノを200円で値上げ申請して、交渉の結果、150円にします。あなた(営業)は50円値上げでき、相手(資材)は50円の値上げ抑制が出来たという結果が残ります。営業の目的を達成しつつ、資材のメンツを維持することが出来ます。

この考えを推し進めると、「最初は値上げ目標額よりほんの少し高めに設定する」のがコツになります。交渉による値下げ幅を最初から確保しておくと営業の満額値上げが引き出しやすいです。

ただあまりにやりすぎると、便乗値上げだとバレますので、注意しましょう(便乗値上げする人と思われると二度と資材からは信用されなくなります)。

 

また余力がある製品の値段を下げるというのも一つの手段です。この製品では僕が勝たせてもらうけど、こっちの製品はあなたの勝ちで良いですよというものです。

大事なのはWIN-WINの関係です。資材にも花を持たせてあげましょう。

 

相手(資材)のことも考えて交渉しようね

 

丁寧に説明する(決して相手の怒りを買わない)

値上げ交渉で営業部門の方が十二分に注意する必要があるのは、相手(資材)の怒りを買わないようにするということです。

先ほど申し上げたとおり、値上げは資材にとってうれしくないことです。それをさも当然のように説明されると資材部門は決して良い感情を抱きません。

特に、1つ目のコツでお話しした「供給を人質」に取るときは細心の注意が必要です。

値上げを要請するときは、会社の方針や外的要因などで、やむを得ず値上げ申請していることを前面に押し出しましょう。そして、資材からの依頼事項については紳士に対応することが必要です。

もし相手の不興を買ってしまうと、今後のビジネスに影響します。最悪の場合、将来的な転注(他社へ注文を切り替えられる)や新規案件の見積依頼が来ないなどのリスクがあります。

 

もし自分の家の家賃が急に値上がりしたら良い感情は抱かないよね?資材へ値上げ依頼するときも同じ話だから、丁寧に話をしたいね。

 

最後に

値上げ交渉をうまくまとめるには、自分の立ち位置を理解し、資材の立場も理解した上で交渉を進めていくことが大事です。

どうせ値上げは無理だろうとあきらめる必要はありません。きちんと事前準備をして5つのコツを実践すれば値上げは可能です。次の値上げ交渉で試してみて下さい。

また、価格交渉を有利に進める上で重要なのは、相手(資材部門)のことを良く知ることです。別の記事に資材部門のことをまとめていますので、参考にしてみて下さい。

 

 

皆さんの値上げ交渉がうまくいくことを祈っています!(でも僕のところには来ないでください笑)

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