こんにちは、コロスケです。
今日は、「購買・調達のKPIはQCDでは無く、事務品質で見るべき」というテーマで解説します。
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で「重要業績指標」のことです。
営業部門のKPIと言えば、売上高や利益率が一般的です。
でも資材部門のKPIは、あまり知っている人は少ないと思います。
今回は、現役資材部員である僕が、「資材部門の適切なKPI」について詳しく解説していきます。
・資材部門のKPIは、どの指標が適切なの?
・資材部員の評価として、QCDの指標はホントに適切?
これら疑問を解決していきます。
購買・調達のKPIは事務品質とすべき理由【QCDでは測れない】
資材部門が採用すべきKPIは、何が適切なのでしょうか?
・QCDの指標では、購買・資材部員の実力は測れません。
・購買・資材調達の能力は、「事務品質」で、ある程度測ることが可能
資材部門のKPIは、Q:品質、C:価格、D:納期の3つの指標が一般的です。
でも実は、QCDの指標では資材部員の実力を測ることは出来ません。
QCDの指標を重要視する会社ほど、資材部員はテクニックに走ることになりがちです。
テクニックに走る組織は、結果として組織の生産性を落とすことに繋がります。
僕が10年以上、資材部員として働いてきた経験を踏まえて、詳細を解説していきます。
一般的な購買・調達部員のKPI
資材部門の主なKPIは以下の3つです。
・原価低減(原低)率・額
・納期遵守率
・購入品の不良率
資材部門はQCD、3つの指標が一般的です。
その中でもC:コスト(原価低減)は、KPIとして採用されることが多い指標です。
原低は、「購入品をどれだけ安く購入できたかを示す指標」です。
1個100円の製品を交渉して、90円に値下げ出来れば10円の原価低減、10%の原低率となります。
原低指標は、購入品の調達を通じて、どれだけ会社の貢献できたかを定量的に測ることが可能です。
実際に、多くの資材部員が「原低は達成できるのか?」とフォローされているのではないでしょうか?
原低指標と資材部門の成績は切っても切り離せないよね・・・
QCDの指標では購買・調達部員の力は測れない理由
このように資材部門では、QCD、特に原低のKPIが重視されています。
しかし、僕が10年以上資材部門で働いてきた実感ですが、QCDの指標では資材部員の実力は測れません。
「原低額・率が、Aさんの方がBさんより良かった=Aさんの方が資材部員として優秀」
ということにはなりません。
でも、どうしてQCDの指標で資材部員の実力が測れないの?
QCDの指標は横並びで比較が出来ない
QCDで担当者の実力が測れないのは、「みんな買っている品種・品目が違うから」です。
同じものを同じタイミングで買っているなら、担当者間を横並びで比較できますが、実際は買っているものも時期も別々です。
品種によっては市況で値下がりしている品目もあれば、値上げ傾向の品目もあります。
それを横並びの指標でみようということ自体がナンセンスです。
別の品種で比較できないなら、同じ品種の過去の実績と比較したら?
残念ながら、同じ品目でも時代によって価格動向は大きく変わってきます。
例えば、村田製作所のMLCCは10年前は安く購入できたかもしれませんが、2018年頃は値上げしてでもモノを確保する状況でした。
このように横並びで比較ができないので、QCDは適切な指標とはなりえないのです。
資材部門という組織の指標としても使えない
QCDのKPIが資材担当者に適用できないのは分かったけど、
組織としての指標としては有効なのでは?
確かに資材部門全体の購買力・調達品の動向を示す指標としては有効だと思います。
何故値上げ傾向なのか?それはどの品目のどんな事情によるのか?
調達の課題を分析する指標としては有効だと思います。
しかし、組織としてのKPIに設定すると、QCD指標を向上・改善させることそのものが目的化してしまいがちです。
僕も一時期、上長指示の下、KPIを向上させるために不毛な仕事をしていました。
・原低を積み増すため、基準を高めに設定する
・納期遵守したことにすべく、データ上の指定納期を変更する
会社の損益に全く貢献しない行動ですが、当時はKPIを高めることが目的になっていました。
原低の基準の考え方は曖昧
特に原低の指標は、基準を何に設定するかで、原低額が大きく変わってきます。
例えば、新規品の原低基準には、いくつか考え方があります。
・一次見積を基準にする
・社内目標値を基準にする
・新規品は原低カウントしない
どの基準を用いるかルール化していないと、人によって原低額が大きく変わることになります。
これが行き過ぎると、取引先に最初は高い見積を出させるなど、誤った行動につながります。
指標よりも、普段の行動の方が重要
例えば納期の場合、どんなに優秀な人でも、市況によっては納期問題を必ず抱えます。
納期問題を起こさないよう、定期的に納期確認をしているか、問題が起きた時に適切に対応できているか、の方が重要です。
QCDの指標は、こうした本質的な資材部員の能力を測ることができないのが一番のデメリットです。
QCDに代わる購買・資材調達部門のKPIは、事務品質であるべき
僕は10年間の経験で、資材部門の成績を評価する指標として、「事務品質」はある程度有効だと考えています。
事務品質とは、事務作業の精度・品質・効率を表すものです。
事務作業が多い資材部門では、事務品質が高い人=仕事が出来る人であることが多いです。
事務作業が資材部員の基本動作
資材部門は、発注・納期確認・資料作成など、事務作業の割合が多いです。
そのため、事務作業が滞ると、色々な問題が起きやすいです。
・納期未確認⇒納期遅延
・発注手続きの遅れ⇒納期遅延
各種事務処理状況を見える化することは、資材部門の付加価値を上げるために役に立ちます。
事務処理を片付けないと、付加価値が高い業務に注力出来ない
本当は、資材部員は付加価値の高い仕事だけに注力できれば良いですよね。
でも実際は、日々の業務もこなした上で、更に付加価値を求められます。
そうなると、必然的に「日々の業務はさっさと片付ける」ことが必要になります。
事務処理が滞留しないように、KPIとして管理すること=付加価値の高い時間を生み出すことに繋がります。
但し事務品質も完璧なKPIとはなり得ない
但し、事務品質の指標も完璧とは言えません。
QCDと同じように、事務処理だけすれば何しても良いという間違えたインセンティブを与えることにもなりやすいです。
(例:値上げ見積を理由も確認せずに発注してしまうなど)
ただ僕は10年間やってきて、事務品質が悪い人に優秀な人はいないことを経験的に確信しています。
少なくとも、資材部員の底上げのために事務品質をKPIとして活用することに一定の意味はあると思っています。
そして、数値を目的化するのではなく、上長や担当者が現状を把握するためのツールとして使うことが重要だと思っています。
まとめ:QCDよりも事務品質をKPIとすべき
本記事のまとめです。
・QCDの指標では、購買・資材部員の実力は測れません。
・購買・資材調達の能力は、「事務品質」で、ある程度測ることが可能
資材部門では、QCDを指標にするより、事務品質の方が重要です。
そしてKPIを目的化せず、あくまでツールとして使う賢さが組織・上長には求められます。
もし皆さんの職場で僕が知らないKPIがあれば是非教えて下さい。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
良かったら、他の記事も読んでみて下さい。きっとあなたの役に立つ情報があると思います。
コメント