こんにちは、コロスケです。
今日は「VMI・預託」という製造業の在庫管理方法を解説します。
近年、VMI(Vendor Managed Inventory)という言葉を良く聞くようになりました。
僕が働く会社でも、特定の部品でVMIを導入しています。
今回は資材部員向けに「VMI・預託とは何か?」を詳しく解説していきます。
・VMIって何?
・VMIと預託って何が違うの?
・VMIのメリット・デメリットが知りたい
これら疑問を解決します。
VMI・預託って何?【メリット・デメリットを現役資材部員が解説】
VMI・預託とは・・・
取引先(サプライヤー)が客先指定倉庫に、「取引先の資産」として保管する仕組みです。
通常、我々は、必要な部材を購入し「自社の資産」として在庫しています。
在庫を持つことで、生産変動に対応することが出来ます。
しかし、在庫を持つことで、会社としては「棚残=金利」が発生してしまいます。
在庫管理する部門は、日々「何とか在庫を減らせないか?」と考えています。
そこで生み出されたのが「VMI、預託」という考え方です。
在庫はするけど、その在庫は「取引先の資産」になるので、自社では棚残が増えないのです。
すごい夢の仕組みだね。もう少し詳しく教えて
それではVMIと預託の詳細を解説していきます。
VMIと預託は何が違うの?
VMI、預託、コック方式、色々な名称で呼ばれていますが、どれも「取引先の資産で在庫する」仕組みです。
なので、基本は同じ意味です。
ただ細かく見ると、以下の違いがあります。
・VMIは、客先のフォーキャストを元に取引先が自分で在庫を積む
・預託とコック方式は同じ意味で、客先フォーキャストが無い場合に使われる
要は取引先から「体系的な所要情報提供があるか無いか」の違いです。
発注側のVMI・預託メリット【棚残削減・BCP】
BCPを導入することの資材側のメリットは、以下の通りです。
・棚残を減らせる
・BCPに寄与する
・在庫管理の手間が無くなる
良いことずくめです。
発注者側には、大きいメリットがあります。
棚残を減らせる
通常、棚残を減らすと、生産変動に耐えられず、納期問題を引き起こしやすいです。
しかし、VMI・預託にすることで棚残の問題が完全に解消されます。
在庫をしつつ棚残が発生しない方法は、VMIや預託だからこそ出来ることです。
BCPに寄与する
取引先の工場が被災した時、取引先で在庫を持っていると、在庫もダメになってしまいます。
預託・VMIは、我々客先or近い場所で在庫をするので、取引先の工場が被災しても在庫は無傷で済みます。
地味かもしれませんが、作る場所と在庫する場所を分けることは、BCPとして大きな意味を持っています。
在庫管理の手間が無くなる
VMI・預託では、在庫は取引先が自分自身でコントロールします。
そのため、自社の在庫管理部門がやっていた作業を大幅に省略できます。
在庫管理は、大きな工数がかかるので、その手間を省けるのは大きなメリットと言えます。
サプライヤー側のVMI・預託メリット
サプライヤー側にも、VMI・預託を導入するメリットがあります。
・取引先の在庫スペース削減
・物流費の削減
・客先の生産計画が分かる(VMIのみ)
取引先の在庫スペース削減
取引先は完成した製品を出荷まで、工場もしくは倉庫に保管しておく必要があります。
客先の需要減で、大量の在庫を抱えてしまった場合、取引先の倉庫スペースを圧迫します。
在庫スペースは、出来るだけ小さい方が管理上もメリットがあります。
VMI、預託は客先の倉庫を活用するので、自社のスペース削減につながります。
物流費の削減
毎日納入してね♪
現状の納入頻度が高い場合、取引先の物流費はバカになりません。
昨今物流費の高騰が続いているので、物流費の抑制は喫緊の課題です。
VMI、預託の場合は、取引先の都合で納入頻度を決められます。
今まで毎日納入していた部材を「月1回」に減らすことも可能となります。
客先の生産計画が分かる(VMIのみ)
取引先の悩みは「客先の正確な生産計画が把握できない」ことです。
そうした課題を解決できるのがVMIです。
VMIは、EDIデータなどで客先の生産計画を受け取ることが出来ます。
そのため客先の生産計画に合わせて、自社の生産計画を立てることが出来るメリットがあります。
VMI・預託導入の壁【取引先はやりたくない】
お互いにメリットがあるなら、全取引先でVMIを導入したら?
資材側にはメリットが大きいです仕組みですが、実は取引先にはデメリットの方が大きいと言われています。
・取引先の資産なので、取引先は今より在庫が増えることが多い
・取引先は棚卸のために、指定倉庫へ行く必要がある
・預託の場合、どのくらい受注が来たか、直ぐに分からない
・VMIの場合、お互いが所要情報を共有する仕組みを導入する必要がある
・下請法に抵触する
取引先は今より在庫が増えることが多い
VMI契約を結ぶ場合、多くの場合は「〇ヶ月分の在庫を持つ」契約をします。
’(そうしないと、客先は安心して在庫を任せられない)
従来は、必要な数量を納入すれば良かったのに、一定量の在庫を必ず持たなければいけなくなります。
そうすると、取引先は「今までより在庫が増える」ことが多いです。
棚残が増えるのは、取引先にとっては大きなデメリットです。
取引先は棚卸のために、指定倉庫へ行く必要がある
工場では定期的に棚卸をする必要があります。
普通なら自社の工場内にある在庫を確認するだけです。
ただVMI・預託の場合は、客先にある在庫を確認しに行く必要があります。
もちろん客先に在庫を確認してもらうことも可能かもしれませんが、自社で棚卸が完結しないのは、大きなデメリットです。
預託の場合、どのくらい受注が来たか、直ぐに分からない
預託の場合は、取引先へ所要を提示しないので、どのくらい受注が来ているか分かりません。
事前に注文書も発行されないので、フタを開けないと注文量が分かりません。
VMIでは、お互いが所要情報を共有する仕組みを導入する必要がある
VMIの肝は、我々客先の所要情報をタイムリーに取引先へ提供することです。
そのためには、EDIなどITツールを使ってタイムリーに情報を提供する仕組みを構築する必要があります。
ITツールの導入には、取引先・自社で費用が発生することがあります、
初期費用が掛かるため、VMIの導入が出来ないケースもあります。
下請法に抵触する
預託・VMIは下請法に抵触する可能性が高いので、注意が必要です。
当社の在庫水準を常に一定に確保しておくため,下請事業者に対し,一定の在庫水準が常に保たれるように納入させ,このうち毎月当社が使用した分について,翌月末に支払っていることは問題ないか。
このような方式(「コック方式」,「使用高払方式」,「VMI(ベンダー・マネージド・インベントリー)」等)の下では,下請事業者は,3条書面が交付されなくても,又は,納期が特定されていなくても,一定の在庫水準が常に保たれるように納入しなければならないので,必然的に親事業者の書面の交付義務違反(書面の不交付,交付遅れ,記載事項の不備)や支払遅延が発生するおそれが強い。
したがって,このような方式は,基本的には本法上認められない。
【出典】下請法テキスト
もしかしたら、下請でも適用できるVMIの運用があるのかもしれませんが、公正取引委員会はNGとなっています。
まとめ:取引先にVMI導入してもらうのは難しい
・VMIは発注者側には、棚残削減などのメリットがある
・取引先にはメリットが少ないので、導入のハードルは高い
VMIは、発注者にとっては是非とも導入したい方式です。
一方、取引先は棚残が増えるので、導入に積極的な取引先は少ない印象です。
カンバン運用の記事でも説明しましたが、大手企業など調達金額が大きい会社でないと導入は難しいかもしれません。
この記事で在庫管理の用語の理解が深まれば幸いです。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
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