こんにちは、コロスケです。
今日は、TSMCという台湾にある半導体ファウンドリー企業をご紹介致します。
TSMCとは、Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyの略です。
その名の通り台湾にある半導体前工程の製造会社です。
半導体の調達の仕事をしていると、必ず耳にする企業名ですが、どんな会社なのかは良く分からない人も多いと思います。
僕も半導体の調達を担当していましたが、最初の頃は「台湾の有名な前工程製造メーカー」というざっくりしたイメージしかありませんでした。
今回は、もう一歩踏み込んでTSMCの概要をご説明していきます。
・TSMCってどんな会社?
・売り上げや利益はどのくらいあるの?
・最新の設備投資状況を知りたい
これらTSMCに関する疑問を解決していきます。
TSMCとはどんな会社か解説【台湾の半導体ファウンドリー企業】
TSMCとはどんな会社か?についての結論です。
・1987年に設立された世界No1の半導体前工程メーカー
・18年度の売り上げが約3.5兆円、利益が37%の超利益体質の会社
・どうしてTSMCがこんなに儲かるのかも詳しく解説
TSMCは、世界No1の半導体前工程メーカーです。
売上が3.5兆円で、なんと営業利益が38%という高利益体質の会社です。
日本の製造業が苦しんでいるのとは対照的です。
具体的にTSMCの概要と、儲かる仕組みを解説していきます。
TSMCの売り上げ・営業利益推移
ここでは、TSMCのIR資料を参考に売り上げ・営業利益などを分析していきます。
売上・営業利益推移
これは2008年から2018年の10年間の売上・利益をグラフ化したものです。
2008年頃は1兆円だった会社の規模が、たった10年で3倍になっております。
まさに右肩上がりの成長です。
そして一番驚くのが「常に営業利益が30%以上」ということです。
2008年、2009年はリーマンショックで、世界中で景気後退していた時期です。
確かにTSMCも一時的に売り上げを落としていますが、それでも利益は高い水準を維持しています。
半導体事業は、半導体サイクルと呼ばれる好況不況を繰り返すことが多いです。
以下は日本のルネサスの営業利益推移です。
このように黒字や赤字を繰り返しております。
景気に左右されず、確実に右肩上がりの成長と、高利益体質を維持できるのには驚くばかりです。
TSMCプロセス別の売り上げ推移
半導体の前工程の技術の高さは、微細化の程度で表されます。
微細化技術とは、半導体チップの中に沢山の情報を埋め込めるようにする技術のことです。
そして微細化は半導体プロセスと呼ばれております。
微細化なので、小さくなればなるほど沢山の情報を埋め込めることが出来ます。
この図は、TSMCの半導体プロセスの進歩を表したものです。
図を見ると一目瞭然ですが、物凄い勢いで微細化技術が進んでいます。
この微細化技術の進歩と比例して、パソコンやスマホの性能・記憶容量も進化しております。
上図は、TSMCのプロセス別の売り上げです。
このグラフを見ると、既に売上の半分以上が、20nm以下のプロセスとなっております。
ちなみに僕が半導体の担当をしていた時は、65nmや40nmのプロセスの半導体を購入していたので、隔世の感があります。
TSMC分野別売上
これはTSMCの半導体が最終的に何に使われているかを表したものです。
これを見ると、約半分がスマホ向けであることが分かります。
スマホはここ10年で急速に普及した新しい市場です。
TSMCはスマホの成長と共に急速に売り上げを伸ばしていることが分かります。
でも、スマホはこれ以上伸びないのでは?
確かにスマホは、今までのような急激な伸びは期待できない市場です。
しかし、TSMCの売り上げには、IoTや車など、今後大きく成長が期待できる分野があります。
恐らく、今後の売り上げUPの鍵を握るのはIoT、車の電装化だと思われます。
TSMCの生産能力
TSMCの生産能力は2018年時点で、1,200万枚(12インチ換算)ものウエハ供給能力があります。
これをみると、先端プロセス(28nm以下)の能力を増強していることが分かります。
今後も車の電装化や、IoTなどの成長需要を取り込むために、先端プロセスの生産能力は増えていくものと推測されます。
TSMCの設備投資額推移
半導体は設備産業です。
モノ作りのためには高額な設備を沢山導入する必要があります。
そして、プロセスが微細化されており、設備投資費用が莫大になっております。
恐ろしいことに、最近は毎年1兆円以上の膨大な設備投資を継続しております。
最先端の微細化技術を追い求めるということは、このような莫大な設備投資を必要とするのです。
2019年は5nmの次世代プロセス品のために投資を行っております。
また将来の技術開発のためにも惜しみなく投資を行っており、今後も半導体プロセス技術をTSMCがけん引していくことが予想出来ます。
TSMCのキャッシュフロー
毎年1兆円以上の設備投資をしているTSMCのキャッシュフローは大丈夫なのでしょうか。
上図はTSMCのお金の動きをグラフ化したものです。
2018年は2兆円もの現金を増やし、設備投資で1.1兆円使っております。
ここから分かるのは、TSMCはその莫大な設備投資費用を全て自力で賄っているということです。
営業活動で稼いだ額の方が多いので、1兆円の投資をしても、まだお金が余っている状況です。
TSMCは物凄い設備投資を続けておりますが、財務的にも健全であることが分かります。
1兆円の投資をしてまだお金が余るって、すごいね。
これじゃあ日本の半導体企業は勝てっこないよね・・・
TSMCは何故、高利益体質の企業なのか?日本企業との違いは何か?
では、何故TSMCは高利益体質を維持できているのでしょうか?
1980年代に繁栄した日本の半導体企業は、何故没落したのでしょうか?
TSMCと日本企業の違いは以下に集約されます。
昔は、半導体メーカーは、設計・製造・販売を全てこなす垂直統合型のビジネスモデルでした。
しかし、プロセスの微細化により、設備投資額が年々増えていくことに耐えられない企業が増えてきました。
この需要に応えたのが、TSMCです。
TSMCは前工程の製造だけに特化しました。この水平分業の仕組みは以下のメリットがあります。
TSMC:沢山の客から受注を貰うことで、設備償却を進めることが出来る
客:莫大な設備投資費用を負担しなくて良い
TSMCは、新しいビジネスモデルをけん引することで、大きく成長することが出来たのです。
今では、最先端プロセスはTSMCなど本当に一部のメーカーにしか製造することが出来ません。
その結果、TSMCは半導体メーカーとしての地位を確立することが出来、高利益体質な企業となることが出来ました。
ちなみに日本の企業は自社の工場に拘ったため、この水平分業の流れに取り残されました。
その結果、1980年代に栄華を誇った日本の半導体企業は没落しました。
日本の半導体企業の歴史は、以下の記事に詳しく書いています。
まとめ
本記事のまとめです。
・TSMCは売上3.5兆円、利益37%の超優良半導体企業
・半導体の前工程製造に特化したビジネスモデルで確固たる地位を確立
・今後も車の電装化、IoT、5Gなどの需要で成長が予想される
調べてみると、やっぱりTSMCは凄い企業でした。
何よりびっくりなのが、1兆円もの投資費用を自分で賄っていることです。
これでは日本の企業は太刀打ちできませんね。
TSMCを知れば、世界の半導体の市況・技術トレンドを知ることが出来ます。
今後もTSMCの動向には注目していきたいと思います。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
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