こんにちは、コロスケです。
今日は、日立化成の基板材料(基材)事業について解説していきます。
2019年12月16日付けで、日立化成が汎用の基板材料(基材)を生産中止にし、汎用基材事業から撤退することを発表しました。
(日立化成より各取引先へレターで通知)
国内の汎用基材市場において、日立化成はパナソニックに次ぐシェアを持っております。
そのため今回の日立化成の撤退により、基板を使用する製造業への影響は非常に大きいです。
今回は資材歴10年の著者が、日立化成の基材事業撤退の詳細について解説していきます。
・日立化成が基材事業を辞めるってホント?
・日立化成の生産中止の詳細が知りたい
・今後基板業界はどうなるの?
これら疑問を解決していきます。
【基板材料】日立化成の基材事業撤退について詳しく解説【生産中止】
日立化成の基材事業撤退の概要は以下の通りです。
・日立化成が汎用基板材料事業から撤退
・現行の生産材料は2021年3月~2022年9月までに生産中止となる
・生産中止となるまでの間、日立化成は大幅値上げを行う見込み
・生産中止後は、南亜他が日立同一材料の生産を引き受ける見込み
とても大きいニュースです。
日立化成は国内シェアを多く獲得しており、国内の基板業界への影響は大きいです。
具体的に日立化成の正式発表の内容を解説致します。
日立化成が汎用基板材料事業から撤退
日立化成が今回生産中止にする基材は以下の通りです。
・FR-4
・CEM-3
・シールド板
・コウベライト積層板
FR-4やCEM-3など、両面、4層基板など汎用基板に用いられる基材が生産中止となります。
特殊材など一部の材料は今回の生産中止の対象外のようですが、大半の品種が今回生産中止となります。
基材事業の撤退理由
日立化成のレターには、基材事業の苦しい状況が書かれています。
事業撤退の背景は以下の通りです。
・汎用基材の需要の伸び悩み
・原材料の高騰による収益悪化
・設備の更新など、事業継続に必要な設備投資費用の回収が困難
汎用の基板は生産が海外に移っております。
また、多層化やビルドアップ基板化など、付加価値の高い基板の比率が高まっております。
そのため、両面、4層などの汎用基板の需要は伸び悩んでいる状況です。
現行の生産材料は2021年3月~2022年9月までに生産中止となる
現在日立化成が製造している基材は、事業所に応じて以下の通り生産中止となります。
製造販売中止予定時期
(1)彦根事業所:2021年3月末出荷まで
(2)下館事業所:2022年9月末出荷まで
(3)広州拠点:2022年9月末出荷まで
(4)香港拠点:2022年9月末出荷まで
日立化成レター
国内外の事業所・拠点が今後どうなるのかは現時点では発表されておりません。
しかしながら、大半の品種が生産中止になることから、事業の大幅な縮小は避けられない模様です。
生産中止となるまでの間、日立化成は大幅値上げを行う見込み
今回生産中止を発表した日立化成ですが、同時に材料の値上げを発表しています。
上げ幅は、品目によって異なりますが、約15%~40%の大幅な値上げとなる模様です。
今後基材メーカーと日立化成で価格の交渉を行うと思われますので、最終的にどの程度値上げとなるかは現状分かっておりません。
しかし、生産中止を発表し、その間の生産継続の条件として値上げを提示していることを考えると、日立の要望に近い額で妥結するのではと予想します。
生産中止後は、南亜他が日立同一材料の生産を引き受ける見込み
日立化成の生産中止品目について、海外基材メーカーが一部生産を引き受けることになっています。
そのため日立化成が生産終了した後は、南亜かTaiwan Union Technology Corporationで同一材料が継続して購入できる見込みです。
NAN YA PLASTICS CORPORATION 及び Taiwan Union Technology Corporationとのライセンス契約による代替の提案を、誠意をもって対応させて頂きます
日立化成レター
但し全ての品目が移管される訳では無く、一部の主要材のみ移管となる見込みです。
具体的な生産移管時期などの詳細は現時点で未定となっております。
日本国内の基板・基板材料市況はどうなるの?【供給ひっ迫する?】
今回の日立化成の事業撤退は、日本国内の基板・基材の業界にどんな影響を与えるのでしょうか?
・南亜他が日立材を供給するが、値段は上がると予想
・将来的には品種統合(日立材は生産中止)となると予想
・国内基材は供給がタイトになる可能性が高い
今回の件で、国内の基材の供給はタイトになることが予想されます。
詳細は以下の通りです。
南亜他が日立材を供給するが、値段は上がると予想
先ほど、日立化成の生産中止後は、南亜など海外メーカーが同一材を継続生産すると説明致しました。
しかし、日立化成が撤退するほど採算が悪かった材料だったので、南亜への移管のタイミングで価格は値上げとなる可能性が高いです。
値上げ幅などは現状は分かっておりませんが、値上げは覚悟していた方が良さそうです。
将来的には品種統合(日立材は生産中止)となると予想
今回、南亜とTaiwan Union Technology Corporationが、ライセンス契約による生産継続を引き受けたのは何故でしょうか?
その理由は恐らく、まだ比較的シェアの低い日本市場の販路を広げるためだと推測されます。
販路拡大が目的なので、恐らく一定期間が経った後に値上げや品種統合(生産中止)になるのではと予想しています。
元々、南亜ではCEM-3とFR-4を作っております。
南亜が今更、複数の品種を継続生産するのはあまり効率が良くないため、どこかで品種を統合するのは自然の流れかと思います。
国内基材は供給がタイトになる可能性が高い
汎用基材について、日立化成はパナソニックに次ぐシェアとなっております。
日立化成の撤退によって、国内の基材の入手性が悪化する可能性があります。
日立の生産量全量を、国内の他社(パナソニック他)で作り切るのは難しいと思います。
海外材への切り替えは進むと思われますが、パナソニックなどの国内基材メーカーの供給ひっ迫が予想されるので、状況を定期的にチェックしましょう。
日立化成の基材の生産中止対応で、資材部員は何をすれば良いの?
基板を買っている資材部員がすべきことは以下の通りです。
・日立化成材を調達しているか調査(どこの工場かも含めて)
・継続使用の場合は、南亜等への移管認定が必要
・南亜や生益など海外材の追加認定が必要
基板を購入している資材部員は対応が必要になってきます。
日立化成材を調達しているか調査(どこの工場かも含めて)
まず最初にすべきことは、日立化成の基材を現在調達しているかどうかです。
購入する際に基材を指定していない場合は、どの基材を使っているか分からないケースもあり得ます。
確認の方法は、購入している基板メーカーに聞けばOKです。
調査の際は、どの事業所で製造している基材かも合わせて確認しましょう。
(事業所毎に生産終了時期が違うため)
継続使用の場合は、南亜等への移管認定が必要
南亜とTaiwan Union Technology Corporationが日立材の生産を引き受けた場合、材料は同じですが、生産工場が変わります。
製造場所が変更となった場合は、評価など変更の手続きが必要になります。
基板メーカー経由で、今後の移管のスケジュールやサンプル提供時期を確認するようにしましょう。
南亜や生益など海外材の追加認定が必要
今回日立材を買っていなくても、今後はパナソニックなど国内市場は供給がタイトになることが予想されています。
またパナソニックの郡山工場が台風の影響で被災したように、天災などのリスクもあります。
このような状況を踏まえると、1社だけから購入するのは非常にリスクが高いです。
資材部員としてBCP対策の重要性は、今後増していきます。
この機会に基材の複数社認定を進めていきましょう。
まとめ
本記事のまとめです。
・日立化成が汎用基板材料事業から撤退
・現行の生産材料は2021年3月~2022年9月までに生産中止となる
・生産中止となるまでの間、日立化成は大幅値上げを行う見込み
・生産中止後は、南亜他が日立同一材料の生産を引き受ける見込み
詳細の情報は今後随時日立化成から展開されると思います。
値上げの発表もしていることから、他社材への切り替えなど早めに行動していきましょう。
また日立製作所は、日立化成を昭和電工へ売却することを検討しております。
日立化成は現在、大きな事業再編の波に晒されています。
今回の基材の事業撤退もこの事業再編の一環だと思われます。
今後も日立化成の動向は目が離せません。
またアップデートがあればこの記事に追記をしていきます。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
良かったら、他の記事も読んでみて下さい。きっとあなたの役に立つ情報があると思います。
■パナソニックの郡山工場の被災について
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