こんにちは、コロスケ( Corosuke blog)です。
今回は、ミニマルファブについて解説していきます。
皆さん、ミニマルファブという言葉をご存知でしょうか?
2010年頃から、開発が進められている「新しい半導体設備」の事を指します。
ミニマルファブは、世界の常識を大きく変える!と言われています。
ですが、僕は個人的には少し懐疑的に見ています。
そこで本記事では、「ミニマルファブの価格・問題点」を分析していきたいと思います。
半導体に関係する方に役立つ情報をお届けします。
ミニマルファブは失敗する?【半導体バイヤーが価格・問題点を分析】
最初にミニマルファブに関する僕の考えをご紹介します。
・ミニマルファブは、半導体の常識を刷新してくれる面白い考え方
・でも「コスト的に普及しないのでは?」とバイヤー目線では思います。
面白い考えですが、ゲームチェンジャーになるほどの実力は無いかなぁと思いました。
特に「コスト」が合わないと、市場は受け入れないと感じています。
詳しく解説していきます。
ミニマルファブとは?【ざっくり解説】
ミニマルファブとは、一般社団法人ミニマルファブ推進機構が推進する「新しい半導体設備」です。
現在半導体を作ろうとすると、半導体専用の工場を作る必要があります。
そしてその投資額は、数百億円~数兆円もの巨大な金額にのぼります。
ですが、ミニマルファブなら「設備1台だけ」を買えば、半導体を作ることができます。
半導体工場の「巨額の投資」というイメージを刷新することができます。
これがミニマルファブの革命的と呼ばれる部分です。
どういう時にミニマルファブは使えるのか?
ミニマルファブが活用できる用途は、以下の5つです。
1.少量多品種で、かつ半導体に自社の独自性を出したい
2.半導体の短い製品ライフサイクルを何とかしたい
3.開発を自社で取り込み開発スピードを上げたい
4.生産を自社で取り込みたい(BCP、コア技術取り込み)
少量多品種で、かつ半導体に自社の独自性を出したい
ミニマルファブは、小さいウエハを1枚だけで生産できる点が一番の特徴です。
そのため、少量多品種の事業をやっている企業は、検討する価値があると思います。
かつ、半導体をカスタム化したいなど「半導体で差別化を図りたい企業向き」です。
現在カスタム半導体の開発費は、数千万~数億円かかります(プロセスによって異なります)。
そのため「開発したいけど、高すぎる開発費を何とかしたい!」という企業はメリットがありそうです。
半導体の短い製品ライフサイクルを何とかしたい
半導体は、製品ライフサイクルが短い事で有名です。
プロセス・技術の進化によって毎年新しい製品が生み出され、既存の製品はすぐにレガシー化してしまいます。
せっかく基板を製作しても、半導体の生産中止で何回も基板変更を余儀なくされるケースも多いと思います。
生産中止に伴う設計変更費用は、年々上昇傾向にあります。
一方でミニマルファブを使えば、半導体の生産を自社に取り込むことができます。
また自社に取り込まなくても、ミニマルファブはウエハ1枚から生産可能なので、委託先での長期供給が見込めます。
このように、ミニマルファブを使うことで、半導体のライフサイクルを伸ばす事ができます。
開発を自社で取り込み開発スピードを上げたい
半導体の開発は、半導体メーカーのロードマップに依存します。
そのため、自社の開発タイミングに合わないなどの問題点があります。
もし半導体をカスタムで起こす場合も、開発期間は半年から2年くらいかかります。
半導体は製品の肝です。
半導体の開発スピードを上げる事で、他社との差別化を図りたい企業も多いです。
そういうニーズに、ミニマルファブは応えます。
自社で半導体を取り込む(もしくは専業メーカーへ委託する)事で、従来の開発スピードを大きく短縮することが期待できます。
生産を自社で取り込みたい(BCP、コア技術取り込み)
2021年、半導体不足が社会的問題になりました。
需要は旺盛なのに、それに応えるだけの半導体を入手できず機会損失になりました。
また新型コロナウイルスや地震など、半導体の供給を脅かすリスクが年々増大しております。
こうした半導体の調達リスクをミニマルファブが解決します。
ミニマルファブで開発すれば、設備が使えなくなっても、他の委託先で同じように作ることが可能です。
「半導体というキーデバイスを外部環境に依存しなくて済む」
これは今の時代、非常にニーズが高いと思います。
ミニマルファブは失敗しそう。価格が高いという問題点を克服できない
一方で先程説明したように、個人的にミニマルファブは失敗すると思っています。
その理由は、以下のとおりです。
・結局コストが全然見合わない。
調達品は、QCDSの4つのバランスで決まります。
いくらメリットがあっても、価格が高すぎると普及にまでは至らないです。
詳しく解説していきます。
ミニマルファブは価格が高い
これは、ミニマルファブの「数量と価格」のグラフです。
ミニマルファブは、少量生産向けなのでチップ生産数が「1万個以下をターゲット」にしています。
ミニマルファブで生産した時の価格イメージは、以下のとおりです。
・1個作る時:100万円/cm2
・10個作る時:10万円/cm2
・100個作る時:1万/cm2
・1,000個作る時:5,000円~6,000円/cm2
もちろん価格は、市場規模次第です。
ですが、上記価格はさすがに高いなぁと感じています。
試作ならまだしも、量産を見据えてこの価格ではメリットが無いです。
商社に在庫をもたせるorまとめ買いする方が経済的
それなら、既存のやり方の方が優れています。
半導体メーカーの標準半導体を安く購入し、自社で在庫をしておく方がトータルの支出は安くすみます。
(長期保管という品質の問題はありますが)
もしくは、倍の値段でも良いので商社に在庫してもらうのも一案です。
棚残を減らしたいなら、こちらの方が良さそうです。
このように「ミニマルファブの単価」VS「在庫」なら、現時点では「在庫」の方がコストメリットがあるので、あえてミニマルファブにする必要も無いと思います。
デジタル半導体ならFPGAで事足りる
そもそもデジタルICなら、FPGAがあります。
FPGAなら、設計を自社で取り込めます。
更にFPGAは、プロセスの進化により値段が安くなってきています。
あえて、ミニマルファブにする必要も無く、FPGAで十分な気がします。
もちろん製造・開発ロードマップはメーカーが握っているのでBCPは不足していますが、あえてミニマルファブにしなくても・・・という感じです。
アナログは特性を出すのが難しそう
「じゃあアナログICならどうか?」と考えますが、それも微妙な気がします。
アナログICは、求める特性を出すのが難しいです。
試作レベルで試すならまだしも、量産品として安定供給しようとすると、それなりのノウハウが必要です。
設計者・製造・製造管理など、半導体製造部門を作る必要がありそうで、そこまで人をかけて自社に取り込むニーズは無い気がします。
一方で「ミニマルファブメーカー」が出てくれば、カスタム品としてアナログを求める需要はある気もします。
(もちろん価格次第ですが)
まとめ:ミニマルファブを使えそうなのは特定業界のみ
以上から、ミニマルファブのニーズがありそうな分野を再度整理しました。
・製品のライフサイクルが20年以上と長く、お金をかけてでもEOLを防ぎたい
・アナログICの開発・試作を自社に取り込みたい
このくらいかなぁと思います。
半導体のロングテールを全部かっさらうのは、厳しい気がします。
でも「少量多品種を狙う」というコンセプトは面白いと思います。
可能性がありそうなので、もし使えそうな用途があればコメントで教えて下さい!
最後まで読んでくれてありがとうございました!
コメント
半導体の単価は主に設備償却費に大きく依存します。また少量生産ですが、すべて自動なので、オペレーションコストはかなり低いでしょう。それと、製造ノウハウも設備の中のPCに組み込まれるので、技術力を持たない世界中の工場が参入して、競争が激化して行くものと思います。その結果、コストも下がると思います。供給量も8インチに対して1/256ですが参入する工場も200倍、300倍となっていくかも知れません。民生用の半導体は初めから大きな需要が見込まれるので生産計画を立てるのも用意なのですが、産業用は少量しか作れず、まず調達する時に大手メーカにお願いして作ってもらうという構図がありますが、そこが逆転するので、まずはその領域から参入していけると思います。
兵器じゃないですか?
国内で作れないとまずいのと少量だから