この記事では、海外調達のリスク・デメリットを解説しています。
会社では海外調達が推進されているけど、リスク・デメリットは無いの?
こんな疑問に答えます。
多くの製造業が、安価な材料を求めて海外調達を進めています。
上司から「海外調達比率を増やせ!」と言われた人もいるのでは無いでしょうか?
でも安易に海外調達を進めると、痛い目を見るかもしれません。
今回は資材調達歴10年で、海外調達をしている著者が「海外調達のリスク・デメリット」を解説します。
海外調達のリスク・デメリット3選を紹介【新人資材部員向けに解説】
海外調達のリスク・デメリットを3つご紹介します。
・海外メーカーは物理的に距離が遠い、時差がある
・商習慣の違いで苦労する(価格・品質・納期)
・為替による調達価格変動
海外調達ってメリットばかり強調されますよね。
でも実はリスク・デメリットも大きいです。
海外調達をする人は、リスク・デメリットを理解した上で調達しましょう。
デメリット3つを詳しく解説します。
【海外調達のリスク】物理的に距離が遠い、時差がある
海外調達のデメリットの1つ目が、物理的な距離の遠さと、時差です。
海外メーカーとの距離の遠さは、色々な弊害を生みます。
メーカー営業担当者との直接の打合せが難しい
海外メーカーと取引をすると、物理的に距離が遠いので、営業担当者と直接会う機会が少ないです。
取引量が多ければ、年に一度くらい来てくれるかもしれませんが、日本のメーカーと比べると面談頻度は下がります。
一方で最近はテレビ会議など、顔を合わせずに面談することが可能になってきました。
昔と比べると、海外との距離も近くなったような気がします。
それでも、直接会ってコミュニケーションを取った方が有益なケースもあります。
メーカーの営業担当と関係性を築きにくいなど、デメリットもあるので、注意しましょう。
時差がある場合、コミュニケーションが取りづらい
欧米から輸入するケースでは、時差が大きな壁になります。
欧米の取引先の場合、朝もしくは夜のみ、直接会話ができます。
そのため、海外メーカーとやり取りをするために勤務時間が長くなったり、メールだけのコミュニケーションになってしまいます。
商社経由の場合は伝言ゲームになる
海外メーカーから調達する場合、日本の商社経由で購入することも多いと思います。
その場合、やりとりは日本の商社と行うことになります。
商社経由でのやり取りだと、伝言ゲームになりがちです。
商社を間に挟むと、こちらの意図が相手に伝わりにくくなります。
特に切迫した状況だと、直接メーカーとやり取りした方が早いので、商社とのやりとりにフラストレーションが溜まりがちです。
相手の工場へ行って、直接調整することが簡単に出来ない
納期や品質の問題が起きた時、相手の工場を訪問するのは、交渉の一つのテクニックです。
工場を訪問することで、優先度を上げてもらいやすくなります。
しかし、海外への出張になると、費用・期間の面で、訪問のハードルが上がります。
工場が海外にあると、日本のように日帰り訪問が難しいです。
(日本でも場所によっては日帰りが難しいかもしれませんが・・・)
また、費用も国内旅費より高いので、よほどのトラブルが無い限り、訪問することは難しいです。
【海外調達のリスク】商習慣の違いで苦労する
2つ目の海外調達リスクは、商習慣の違いです。
海外では、日本と商習慣が違うケースがあります。
そのため日本メーカーと同じように取引をすると、大きな問題になることもあります。
国・企業によっても違いますが、僕が感じる商習慣の違いは以下の2つです。
・価格維持、定期コストダウンの考えが無い
・納期、需給がひっ迫すると値上げ
価格維持、定期コストダウンの考えが無い
日本での取引では、「価格は当然維持するもの」という考えが根強いです。
価格を上げたい場合は、値上げの相談をして、合意を得てから値上げするケースも多いです。
一方で海外のメーカーは、自身の都合で一方的に値上げをしてくるケースがあります。
また、定期コストダウン要望も海外メーカーには理解されにくいです。
何で前提条件が変わっていないのに、値段を下げなきゃいけないんだ?
という至極真っ当なカウンターが返ってきます。
どちらかと言うと、海外メーカーの理論が真っ当です。
でも日本の文化に慣れた資材部員は、海外メーカーの対応にびっくりしてしまう人もいます。
日本のメーカーとの付き合い方をそのまま援用すると、痛い目を見るので注意しましょう。
納期、需給がひっ迫すると値上げ
海外のメーカーは、供給がひっ迫すると大幅に値上げをしてくることが多いです。
例えば、2017年~18年のコンデンサの需給がひっ迫した時、台湾のメーカーは、大幅な値上げを行いました。
受給ひっ迫した時に、大幅な値上げを行うことで、40%以上の利益を得ています。
(電子部品のメーカーでは考えられない利益です)
一方で日本のメーカーは、海外メーカーよりも「供給責任」を重く捉えています。
そのため、供給を盾に取った値上げを露骨にやることは、商習慣に反すると考えているところが多いようです。
また日本では、納期短縮交渉をしている時に「値上げ」の話をされることは、ほとんどありません。
しかし、海外メーカーでは「納期と価格がセット」になっているケースがあります。
採用時に「安い」と思っても、後々高いお金を払うことになるケースもあり得ます。
為替による調達価格変動リスクがある
海外メーカーから材料を調達すると、「為替リスク」が発生します。
採用時は安い値段でも、円安に振れると調達価格が値上がりします。
例えば、100ドルの製品の場合、
・為替レート120円→12,000円
・為替レート80円→8,000円
2011年頃、1円=80円になった時、多くの企業が調達品の輸入を拡大させました。
しかし、2020年5月時点では107円くらいです。
目先の利益につられると、後々「止めときゃ良かった・・・」となる可能性もあります。
為替がどのくらい変動するのかを想定した上で、海外調達をするようにしましょう。
商社経由で購入して、固定価格にすれば為替リスクが無くなるよね?
商社経由で輸入する製品には、「固定価格」で買っている人もいるかと思います。
しかし、商社は慈善事業では無いので、為替変動リスクを価格に織り込みます。
1ドルの商品を100円で売ると、円安の時に損するよね。
だから、客先には150円で売ろう。
となり、調達価格が値上がりします。
固定価格は、事務処理を楽に出来るメリットもありますが、為替リスク分、高い価格で買っていることを覚えておきましょう。
まとめ:海外調達のリスク・デメリットを理解して調達しよう
海外調達のリスク・デメリットのおさらいです。
・海外メーカーは物理的に距離が遠い、時差がある
・商習慣の違いで苦労する(価格・品質・納期)
・為替による調達価格変動
海外調達は、原価低減を獲得できるメリットがあります。
一方で商習慣の違いや為替など、日本には無いリスクもあります。
海外調達をする際は、事前にリスクを洗い出した上で切り替えるようにしましょう。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
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