値上げの理由10選【営業担当者が値上げ交渉で使えるネタ】

資材業務について
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こんにちは、コロスケです。

今日は、製造業の営業担当者が価格交渉の時に、実際に使える値上げ理由をまとめてみました。

上司から売値の改善を指示された時、あなたはどのような理由で客先に値上げの要請をしますか?

「採算を改善したい」と客先に言おうものなら、「こちらも採算を改善したいので、何か値下げ案を持ってきてほしい」と返り討ちにあうのが関の山でしょう。

客先に値上げを要請するときは、適切な値上げ理由を説明する必要があります。今回は資材歴10年の僕が10年間の業務を通じて実際に出会った値上げ理由をピックアップしていきます。

値上げ理由が思い浮かばない!という営業部門の方の課題を解決していきます。

 

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値上げの理由10選【製造業の営業向け】

頻出

①物流費の値上げ

②人件費の値上げ

③材料費の値上げ

④扱い量の減少による値上げ

⑤為替変動による値上げ

⑥市況価格変動による値上げ

これらは、ポピュラーな値上げ理由で、資材部員の僕が頻繁に出会う値上げ理由です。

 

売り手都合

⑦安定供給のための値上げ

⑧設備維持・更新による値上げ

⑨歩留悪化による値上げ

この3つの理由は、売り手(営業であるあなた側)の都合による値上げ理由です。

 

買い手都合

⑩追加要求・仕様変更による値上げ

これは買い手側(客先)の都合による値上げ理由です。

 

これら10個の値上げ理由から適切なモノを値上げ理由に選んでいくのですが、大前提として「実際に発生した値上げ事象」を理由に選んで下さい。実際に発生していないことを理由として値上げ要請するとウソがバレます。

客先の資材部員もバカではありません。本当に起きたのか?を詳しく追及してきます。根掘り葉掘り聞かれる中で、矛盾が生じたりします。また資材部員は他のメーカーからも情報を仕入れています。同じ業界にも関わらず1社だけ値上げしていたら、不審に思います。

ウソを用いると後々苦労しますし、商売で一番大事な信用を無くしますので注意しましょう。

 

ウソがダメならどの理由を使えば良いんだろう?

  

どの理由を採用すれば良いのでしょうか。答えは自分の製造現場/仕入先にあります。彼らが実際に困っていることがそのまま値上げ理由になります。

製造部門/仕入先へのヒアリングをもとに、上記10個の値上げ理由から適切なものを選びましょう。

 

①物流費値上げ

・最近の値上げ理由堂々のNo.1

・物流費として10%程度上昇が一般的

・国内だけでなく、海外輸送(特に海運)も値上がり傾向

昨今の物流業界の値上げは社会問題となっており、一般的に認知されております。広く知れ渡っているということは、値上げ理由として話をしやすいです。

特に直近では海運の燃料規制の影響で値上げしていますので、もし海外から輸入している場合は、値上げ理由に使えるはずです。

値上げ幅は、運送形態にもよりますが、物流費として10%程度の値上げが妥当な範囲かと思います(製品の10%ではないことに注意)。実際に物流費がどのくらい上がっているのかを調べてみましょう。

 

一般に知れ渡った値上げ理由なら話がしやすいね。

 

②人件費の値上げ

・物流費に次ぐ最近主流な値上げ理由

・人手がかかる製品では説明しやすい

・製品にもよるが製品費の5~10%程度の値上げが多い

地方のメーカーの工場を訪問すると、皆さん口をそろえて「人が集まらない」と言います。人口減少で働き手が少なくなってきているのは事実です。

各社人を集めるために、時給を上げたり、正社員化するなど人件費の支出が増えております。これらの理由も客先の資材部門には理解してもらいやすい内容です。

また、海外の工場も同様です。特に中国の工場は日本以上に人件費が上昇しておりますので、中国工場の製品の場合は、より話がしやすいかと思います。

まずは自分の工場の人件費の状況を確認してみましょう。

 

③材料費の値上げ

・昔からある定番の値上げ理由

・詳細(材料は何か?値上げ幅は?など)の説明が求められる

・値上げ幅は材料費の上げ幅次第

部材費が値上がりして・・・という値上げ理由を、資材部員の僕は聞き飽きるほど聞いてきました。そのくらい定番の値上げ理由です。

製品に使われている材料(鉄・樹脂・電子部品等々)の値上がりが根拠となりますが、これは客先の資材部員へ詳細の説明が求められます。

値上げ申請するときは事前に「どの材料が、どのくらい、どうして上がったのか」を最低限明確にしましょう。

 

定番な値上げ理由なだけに、詳細の説明が求められるね。

 

④扱い量の減少による値上げ

・当初の見込み数量より実際の注文数が少ない場合に使える

・基準となる見込み数量のエビデンス(見積等)があった方がよい

・値上げ幅は、数量の減少度合いと反比例する

扱い量の減少は、「製品の終息が近くなり数量が減少している」場合と、「合意した数量見込みと乖離している」場合の2パターンがあります。

「最初に値決めした際にどのくらいの数量を想定していたのか」を客先の資材部員へ説明する必要があります。

数量が大きく減ると、その分値上げ幅も大きくなります。更に、数量が減ってモノ作りの仕方を変えるなど、数量減が価格に与える影響が大きい場合は、値上げ幅もより大きくなります。

 

⑤為替変動による値上げ

・輸入品では鉄板の値上げ理由

・為替が円高に振れた時は、逆に値下げを要請されるリスクがある

・値上げ幅は為替の変動幅に準ずる

為替は客観的な指標のため、比較的話がしやすいと思われますが、実は泥沼にはまり易い値上げ理由の一つです。

 

計算方法も簡単だし、もめることは無さそうだけど・・・

 

もめる一番の理由は、いつの為替レートを基準に見るかということです。仮に今が100円/$の場合、最初に単価を決めた時いったいいくらのレートでやっていたのかが分かりません。

営業部門は90円/$ベースで算出していると説明しますが、資材部門からは、以前110円のケースもあったなど、水掛け論になりがちです。

また、為替を理由に値上げをすると、円高になった時は値下げする必要が出てきます。為替の話をする以上は円高時の値下げを覚悟した上で客先と話をしましょう。

 

⑥市況価格変動による値上げ

・銅・アルミ・金など、市況価格がある品目を使っている製品で使用できる

・市況価格下落時は、逆に値下げとなる

・値上げ幅は市況価格の変動幅に準ずる

為替とほぼ同じ説明となります。市況価格が逆に動いたときは値下げをする前提で客先と話す必要があります。

市況価格と連動するということは、内訳をオープンにするということです。損をすることは減るかもしれませんが、相手に価格の内訳を開示することで、価格のコントロールが今後しづらくなるリスクも抱えています。

直近の利幅改善が最優先であれば、仕方ないですが、あえて市況価格と連動させないで価格をブラックボックス化する手段もあります。

 

あえて、価格をブラックボックスにする手法もあるんだね。

 

⑦安定供給のための値上げ

・いわゆる理由なしの売り手都合の値上げ

・売り手有利の状況の時に使える値上げ理由

・値上げ幅はどれだけ売り手が優位かによって決まる

市場シェアが高い製品や、市場が寡占化している場合、供給がひっ迫して需要>供給となっている場合は、この手法が一番有効です。

今までのように、特に根拠も無く客先に要請することが出来ますので、営業部門としては使い勝手が良いです。

但し、自分たちが有利な場合に限ります。それ以外でこの値上げ理由を使うと返り討ちに会いますので注意しましょう。

 

⑧設備維持・更新による値上げ

・供給してから一定期間経過している必要がある

・販売する製品がカスタムで、生産設備が特殊な場合に使いやすい

・値上げ幅は設備費用によるが、別枠管理で償却扱いになる可能性あり

供給開始から一定期間経ち、設備の更新が必要な場合、通常は自社で設備を更新し、その費用は製品費の中でやりくりしていきます。一方、更新する設備が客先専用など特殊な事情がある場合は、それを値上げ理由として値上げ要請します。

この場合、値上げでは無く別枠管理で設備費の償却を管理される可能性があります。

 

設備に関する費用は、製品費の値上げでは無く、別枠管理となりそうだね

 

⑨歩留悪化による値上げ

・何らかの理由でモノ作りのコストが上昇した時に使う理由

・製造の肝である歩留を開示させられるため基本的には使われない

・客先が納得できる場合に、歩留悪化の一部が認められる可能性がある

歩留とは、製造時に良品が出来る割合のことです。歩留が悪化すると良品が取れる率が下がるので、モノ作りのコストが上昇します。

歩留率とは、製造メーカーにとって社外秘情報ですので客先からの依頼であっても基本的には開示しません。通常、歩留が悪化して生産性が悪化した場合は、自社の製造改善で解決しようとします。

ですので、客先に申請するということは、よっぽどの理由となります。自分の製造現場に客先が立ち入ってくる可能性もありますので、この理由を用いる場合は社内関係者と事前によく話し合った上で使いましょう。

 

どういうときに歩留理由で値上げ申請できるの?

 

考えられるのが、客先の仕様が想定よりも難しいケースです。一度は仕様の合意をしましたが、実際にモノ作りをしたときに、なかなか良品が取れない場合に用いられることがあります。

ただ、このような値上げ要求がくると、客先は厳しい仕様を緩和することで歩留を改善することの方が多いです。

 

⑩追加要求・仕様変更による値上げ

・客先の追加要求・仕様変更による値上げ

・追加要求と値上げはセットで実施すべき

・値上げ幅は、追加要求の内容次第

仕様が決まった後に、製品の価格を決めるのが普通ですが、価格と仕様が決定した後に後出しで追加要求が来るときがあります。

当初の前提条件が変わってくるので、追加仕様の内容に応じて値上げの要請が可能です。また値上げの要請は、追加要求があったタイミングで必ず行いましょう。

たまに量産が始まって、半年ないし1年経過してから仕様追加による値上げ要請をしてくる営業担当がいますが、タイミングとしては遅すぎます。

資材部門としては、「何故今更言ってくるのだろう?今まで要請してこなかったのだから、これからも大丈夫でしょう」と言われてしまう可能性大です。

もちろん交渉事なので、きちんとした背景を説明すれば受け入れられる可能性はありますが、相手の資材部門に納得してもらうのに時間がかかります。

追加要求と値上げはセットで行いましょう。

 

最後に

客先の資材部門は、「適正な価格でモノを購入する」ことが使命です。そのため、合理的な理由が無い値上げは資材部門からなかなか受け入れられません。

しかし、逆から考えると、値上げした価格が「適正な価格」であることを証明できれば、値上げは認められます。

今日お話しした適切な値上げ理由を準備してから、客先へ値上げ要請に行きましょう。

また、実際に値上げ交渉をスムーズに進めるためには、「値上げ理由」だけでなく、値上げ交渉のコツもマスターする必要があります。値上げ交渉の方法については以下の記事でまとめていますのでよかったらご覧ください。

営業部門の方が適切な値上げ理由を準備してくれると、結果として値上げ交渉の時間が短縮されるので、資材部門にとっても効率化につながります。

この記事を通じて営業・資材部門両方がWIN-WINの関係になれることを祈っています!

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