キーエンスのスゴイところ・参考になった点をバイヤー目線で解説

キーエンスのスゴイところ・参考になったポイントをバイヤー目線で解説
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こんにちは、コロスケ( Corosuke blog)です。

先日以下の本を読みました。

       

      

前々から「キーエンスは何でこんな儲かるんだろう?」と気になっていたら、この本を発見しました。

今回は、この本を読んで参考になった部分を解説していきたいと思います。

        

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キーエンスのスゴイところ・参考になった点をバイヤー目線で解説

        

KPI

キーエンスの考え方ですごいと思ったことは「プロセスを積み上げることでおのずと成果が出る」という考えです。

そのためキーエンスでは「電話の回数」など、誰でもできる事がKPIに設定されます。

売上・利益を伸ばすために必要なプロセスをKPIに設定しているので、KPIを意識して仕事をすれば、必然的に結果がでる仕組みを作っています。

      

一方で一般的な会社では、KPIに「売り上げ」「利益」を設定することが多いです。

ですがこうした指標は「結果だけにフォーカスしている」ことが特徴です。

結果だけにフォーカスすることは以下の2つの弊害があります。

      

・精神論になりやすい

・公正な判断がしにくい

      

KPIを利益にすると、管理職は部下に対してこんなフォローをします。

      

君、売上目標未達じゃないか!どうなっているんだ?

     

すみません、もっと頑張ります

       

KPIが売り上げなので、当然上司は売り上げが未達の状況をフォローします。

ですが部下はどうして売上が上がらないのか、どうすれば良いのか分かりません。

上司・部下ともに、精神論的な話になってしまいます。

こういう管理では、うまく改善するわけがありません。

      

また売上は、公正な判断ができません。

売上が右肩上がりのA社を担当する人と、売上が右肩下がりのB社を担当する人が同じ土台で評価されるのはおかしいですよね。

そのため純粋に売上に従って評価をすると、部下たちの間に不満が生じやすいです。

     

資材部門も同じです。

資材部門は「コストダウン率」をKPIに設定することが多いですが、コストダウンも担当品種によって状況が大きく変わります。

そうした指標は「公平ではない」という事を上司も部下も知っています。

        

にもかかわらず、KPIは未だにコストダウン率であることが一般的です。

なので僕は、以前からKPIはもっと別のものにすべきと考えていました。

      

            

基本動作を徹底する力

この本を読んでいて、キーエンスの基本動作を徹底する仕組みがすごいと思いました。

     

・ロープレ(客先との面談の練習)

・外報(一日の業務の徹底した可視化)

・定期コスト交渉

・VE活動

    

キーエンスでは、交渉の流れ・進め方の台本が用意されています。

営業担当は、その型に沿って顧客に説明していきます。

台本まで用意して、毎日ロープレをするのはすごいですよね。

(キーエンスの人は、歯を磨くようにロープレをするとのこと)

    

また外報は、1分単位で書き込むという徹底振りです。

詳細な外報を書き込むことで、営業担当の一日の取り組みを可視化することができます。

      

ですが、この活動を徹底できる人はそこまでいません。

    

その点キーエンスは、やりきるための徹底した管理、基本動作を徹底する企業文化が根付いています。

恐らくこの基本動作を徹底する組織の文化・管理力が、強さの源泉でもありブラックと言われるゆえんだと思います。

      

「忙しいからロープレをする時間がない」

     

と僕たちは考えますが、キーエンスの人にしてみると「優先順位が間違えている」という事になるんだと思います。

(「1本の木を切り倒すのに6時間もらえるなら、最初の4時間は斧を研ぐのに使う」という例えと同じですね)

          

データを蓄積する事を最重要視している点

キーエンスの強みは、営業が積み上げてきた知識・ノウハウをデータ化するところにあります。

    

営業が集めた地道に積み上げたデータをSFAと呼ばれるシステムで一括して収集・管理します。

そのデータは、徹底的に活用されます。

      

・過去どういう機種からの切り替えが多かったか

・機種の更新タイミングを踏まえた売り込み

・どういう属性の人に売り込むと、成約率が高いか

      

こうしたデータに基づいた科学的な営業をすることで、成約打率を上げる事が可能になります。

      

資材部門も同じです。

調達品のデータを適切に積み上げる事で、適切な活動ができるようになります。

     

・取引先の概要、特徴、キーマン

・類似品の価格差是正

・交渉履歴の見える化

・価格の妥当性を把握

     

資材部門は、かなり属人的な仕事をしています。

調達のノウハウ・知識は、担当者の頭の中にしか入っていません。

また各種データは、様々なフォルダやシステムにバラバラに保管されており、有効活用できていないケースが多いです。

     

データをうまく活用できれば、もっと調達力は上がり仕事も効率化できると思います。

実際元キーエンスでA1Aを創業された松原さんは、あまりにも属人的な仕事振りを見て、RFQクラウドを思いついたのだと思います。

     

取引先に優位な契約(支払い条件、1年手配確約)

キーエンスは、ファブレス企業です。

一方で本を読むと、実際のモノづくりをする委託先と一緒に徹底したモノづくりをしている事が伺えます。

     

キーエンスの商品の製造を担当した経験がある企業からは「一般的な企業は仕様書を渡したら丸投げだがキーエンスは『ここがつくりにくい』というパート従業員の意見まで商品に反映してた」との声も上がる。

【出典】キーエンス解剖

        

営業部門だけでなく、モノづくり側でも基本動作が徹底されていることが良く分かります。

そして調達の関係で僕が参考になったのは、キーエンスが取引先に優位な契約条件で手配しているというところです。

     

・取引先に優位な支払い条件

・1年間の確定手配を行う

    

大手企業は、多額の発注額を背景に自社に有利な契約を迫ります。

キーエンスなら、当然有利な条件を押し付けることは可能です。

しかし、キーエンスはあえて取引先に優位な条件を結んでいます。

      

取引先の立場からすると、どう思うでしょうか?

自社に有利な条件で仕事ができるキーエンスを優遇したくなりますよね。

実際、キーエンスは相手に有利な条件を提示することで、少量多品種でも対応してくれる、納期調整で優位に立てるという大きなメリットを得ています。

     

「最終的に利益を出すために、払うところはしっかり払う。かなり合理性のある”フレンドリーさ”だ」

【出典】キーエンス解剖

      

現在僕は、調達ひっ迫として先納期手配した品目のキャンセル交渉をしています。

     

       

こうしたキャンセル交渉をすると、取引先は「もうコロスケの会社の注文は信じられない」となります。

すると今後需要が急増した時に、対応してくれなくなります。

短期的な棚残改善のために、取引先からの安定調達を捨ててしまっています。

     

こういうキーエンスの大局的なモノの考え方は、とても参考になります。

     

即納と在庫削減を両立する調達力がすごい

キーエンスは「即納:全商品当日出荷」という看板を掲げています。

      

【出典】キーエンスの当日出荷
【出典】キーエンスの当日出荷

       

即納の旗を掲げる一方で、キーエンスは多品種少量のビジネスモデルです。

そしてFA製品というのは、景気変動の影響を受けやすいです。

     

このビジネスモデルで、即納を実現しようとすると、大量の製品・仕掛在庫を抱える必要があります。

(なぜなら、そうしないと需要の急増に対応できないから)

ですがキーエンスは、部材のJITを掲げるトヨタよりも在庫が少ないです。

    

棚卸資産比較(トヨタ・キーエンス)
棚卸資産比較(トヨタ・キーエンス)

      

どうやって即納と棚残を両立しているのかな?

     

本には、詳しい仕組みは書かれていませんでした。

ですが、本に書かれたキーエンスの思想・考え方を踏まえると、裏技はなく地道な改善を続けた結果なのでは?と思います。

データに基づき「適正な在庫・手配量はどのくらいか?」というPDCAを回しているはずです。

    

正直、僕は過去の経験則からの判断だけで「過去の納期はどのくらい適正だったか?」を詳しく振り返って分析・改善した事がありません。

僕もキーエンスのように地道な改善をもっと実施しようと思いました。

(キーエンスの在庫削減に関する本があれば絶対に読みたいです)

      

まとめ:キーエンスの業務は参考になる部分が多い

キーエンスは何となくブラックなイメージが先行しています。

ですが属人性を排除して、誰でも成果を出せる仕組みを作るところは非常に参考になりました。

    

キーエンスの高利益体質を生み出す文化は、多くの製造業に参考になるかと思います。

一読の価値がある本でしたので、製造業に関わる方はぜひ読んでみて下さい!

        

      

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