この記事は以下のことが知りたい方向けの記事です。
・ナフサって何?
・ナフサ連動・ナフサリンクって何?
・ナフサ連動はどうやって計算するの?
・何でナフサ連動というルールが普及しているの?
・今後樹脂の価格は上がるの?下がるの?
こんにちは、コロスケです。
今日は樹脂の価格を決めるルールである、ナフサ連動・ナフサリンクについてまとめていきます。
コンビニ弁当の容器、スタバの飲み物の容器、ペットボトル、テレビのリモコン、パソコンのキーボードなど、プラスチック製品は僕たちの生活に溶け込んでいます。
そんなプラスチック製品の材料である「樹脂」はどうやって価格が決まるか知っていますか?
今回は資材歴10年の現役資材部員の僕が、樹脂の価格の決め方・ルールについて解説していきます。
樹脂の価格はどうやって決まるの?ナフサリンクって何?といった疑問を解決していきます。
ナフサ連動・ナフサリンクを詳しく解説【樹脂価格フォーミュラ】
樹脂は、原料である原油の価格が変わることから、定期的に値段が改定されます。
日本では樹脂の値段はナフサリンク(ナフサ連動とも言います)で決まることが多いです。
このナフサリンクは、樹脂業界の人や樹脂バイヤーでは当たり前のルールですが、今回はそのルールを詳しく解説していきたいと思います。
出来るだけ分かりやすく解説していくね
ナフサとは?
ナフサ(英語:naphtha)とは、原油を常圧上蒸留装置によって蒸留分離して得られる製品のうち沸点範囲がおおむね30 – 180℃程度のものである。粗製ガソリン、直留ガソリンなどとも呼ばれる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%95%E3%82%B5
とりあえず「ナフサとは、原油から作られるプラスチック樹脂の原料」と覚えておけばOKです。
ナフサは原油から出来ているので、原油価格によって値段が大きく変わります。
たまに、中東情勢が不安定になり原油価格が上昇した、とニュースになりますが、実はそれってプラスチック樹脂の値段も上がるということを意味していたんです。
原油ってガソリンだけじゃなく、プラスチック製品の元にもなっているんだね
ナフサ連動・ナフサリンクの意味
先ほどプラスチックの原料になるナフサの価格は、原油の価格によって決まるとご説明しました。
ナフサリンク(ナフサ連動)とは、日々価格が変動するナフサ相場を樹脂に適切に反映させるために考えられた樹脂の値段の決め方です。
通常、会社と会社で取引をする際は、メーカーの表示価格で購入したり、お互いの価格交渉で値段を決めます。
しかし樹脂の場合、樹脂原料(ナフサ)は日々変動しているので、価格を決めるのが大変です。(最初に決めた価格もナフサの変動に応じて価格を改定する必要が出てきます)
そこで生み出されたのが、ナフサリンク(ナフサ連動)です。
ナフサリンク(ナフサ連動)での価格の決め方は以下の通りです。
・ナフサの価格変動幅と、樹脂の価格連動を連動すること
ナフサリンク(ナフサ連動)の具体的なルール(改定方法・改定時期)は、取引する会社同士で決めます。
そのため、ナフサリンクのフォーミュラー(価格改定ルール)は、取引先によってバラバラです。
しかし、その中でもトヨタが各樹脂メーカーと決めているナフサフォーミュラーは「トヨタナフサ」と呼ばれています。
取引量が多く、業界への影響力も強いトヨタが決めるルールは、業界でも一つの指標になっています。
ナフサリンクでは、最初に価格変動ルールを決めてあるんだね
ナフサリンクの計算式
ナフサリンクの計算式は、会社毎にルールが異なりますが、一般的に以下のポイントを前もって決めておきます。
・価格改定ルールと改定幅をどうするか
・価格改定時期をどうするか(毎月・四半期・半年など)
・ナフサ以外の変動要因を含めるのか
一般的には、「国産ナフサ1 klあたり、樹脂価格を〇円/kg変動させる」やり方が多いです。
〇円の部分は、樹脂メーカーが提案してくることが多いです。
価格改定時期について、樹脂メーカーは出来るだけ短い期間(毎月や四半期ごと)での改定を希望してきます。それは、原料の値段変動をタイムリーに樹脂価格へ反映させたいからです。
例えば、価格改定時期が1年おきの場合、原料価格と樹脂価格が最大1年間もずれることになってしまうので、樹脂メーカーはそのような長い期間は嫌がるケースが多いです。
一方、買い手は毎月価格を改定するのが大変なので、出来るだけ改定時期を伸ばそうとするケースが多いです。
ナフサリンクのメリット(どうしてナフサリンクが出来たのか)
ナフサリンクを適用しない場合、樹脂の価格は都度交渉となります。
樹脂メーカーは、原料が上がると客先へ原料分の値上げを要請しますが、その値段の交渉に時間がかかることが多いです。
ナフサの価格が上がったので10円値上げさせて下さい
10円値上げする根拠は何ですか?
ナフサが一万円上がったのが根拠です。
その計算方法は妥当なのでしょうか?また、いつからいつの期間の話ですか?
そもそも前回ナフサが値段下がった時、値下げしてくれましたか?
など、交渉が非常に長引くケースが多いです。
樹脂価格が大きく変動する時期は、その価格交渉が頻繁に繰り返されます。
そのため、売り手(営業担当者)も買い手(資材担当者)も疲弊してしまいます。
お互いナフサの価格変動で儲けたい訳では無かったので、ナフサの変動による価格交渉の手続きを簡略化する方法が編み出されました。
それが、ナフサリンクと呼ばれる価格決定の手法(フォーミュラー)です。
ナフサリンクの場合、最初に価格決定方法を決めてしまえば、その後ナフサの価格変動で揉めることが無くなるのが最大のメリットです。
そして、お互いが納得したルールで価格を改定するので、買い手(資材側)も売り手側(営業側)も納得できる価格改定となります(不公平感が無い)。
また短いスパンでの価格改定にすれば、原料の価格変動をタイムリーに樹脂価格へ反映することが出来ます。これも樹脂メーカーにとってはメリットと言えます。
ナフサリンクにするとメリットが大きいね
ナフサリンクのデメリット(実態を反映していないケースがある)
話を聞くと、ナフサリンクは素晴らしい価格改定ルールのように見えます。
しかし、最近そのナフサリンクを見直す動きも一部で出てきております。
でもどうして一部樹脂メーカーは、ナフサリンクの見直しを求めているのでしょうか。
その原因は以下の通りです。
ナフサの価格改定ルールが実態の原料価格の変動とリンクしていないため、樹脂メーカーが損をするケースが発生している
最初に決めた改定ルールが実は実態と合っていなかったケースがあったのです。
例えば、エンプラと呼ばれる樹脂や、難燃剤という燃えにくい添加剤を追加した樹脂は、ナフサの価格動向とは実は連動しません。
しかし、当時客先の意向や慣習でナフサリンクにしてしまったことから、こういう問題が発生しています。
なので、ナフサリンクの見直しとは、今までのように都度交渉にする訳ではありません。あくまでも実際の原料動向に合った改定ルールへの見直しです。
今後ナフサ価格は上昇するの?下落するの?
ナフサ価格を予言出来る人がいれば、樹脂業界の救世主として活躍することでしょう。
ただ、実際はそんな人はいないので、ナフサ価格の予想は非常に難しいです。
ただナフサは原料である原油の価格動向に依存します。
一般的に原油は以下の要因で変動します。
・産油国の政治的な事情(戦争など)で原油の採掘量が減るリスク(値上げ方向)
・OPECなどの協調減産の動向(減産されれば値上げ方向)
・米国のシェールガスの動向(シェールガス供給が増えれば値下げ方向)
・世界経済の動向(景気が良くなると需要が増えるので、原油は値上げ方向)
・タンカーの事故(供給が滞る恐れから値上げ方向)
今後のナフサの動きを予想するためには、上記色々な政治・経済事情を調べることが有効です。
やっぱり日々のニュースや新聞をチェックすることは大事なんだね
まとめ
日々の生活ではナフサ価格を気にすることは無いですが、実はナフサは僕たちの生活に欠かせないプラスチック製品に影響を与えているんです。
今後ナフサという言葉を聞いたら、「樹脂プラスチックに影響があるんだな」と考えてもらえると、ニュースや新聞の理解度もより高まると思います。
また、資材部員にとっては購入品の価格を査定するときにとても重要な指標の一つになります。これを機会にナフサリンクをきちんと勉強していきましょう。
きっと価格交渉で、あなたの武器の一つになってくれると思います。
この記事を通じて、ナフサリンク(ナフサ連動)に関する疑問が解決してくれればとてもうれしいです。
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