働き方改革による下請企業へのしわ寄せについて資材部員が解説

資材業務について
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こんにちは、コロスケです。

今日は、働き方改革と下請企業について書いていきます。

 

先日の日本経済新聞の記事で、働き方改革と下請企業の話が話題になりました。

 

働き方改革、下請け中小へのしわ寄せ防止 政府が対策 下請法違反の大企業に厳正対応 - 日本経済新聞
政府は大企業の働き方改革に伴う下請け中小企業への「しわ寄せ」を防ぐための総合対策をとりまとめる。労働局や労働基準監督署は中小企業からの相談について関係機関と情報を共有する。公正取引委員会は必要に応じて改善勧告を出し、企業名を公表するなど厳し...

 

政府は大企業の働き方改革に伴う下請け中小企業への「しわ寄せ」を防ぐための総合対策をとりまとめる。 ~中略~  働き方改革を中小にも浸透させるとともに、賃金引き上げへの環境を整える。

日本経済新聞  https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46470940T20C19A6PE8000/

 

この問題について、製造業の資材歴10年の著者が、働き方改革と下請企業との関係について解説していきます。

働き方改革と下請企業にどんな関連があるのかを知りたい方に有益な情報を提供していきます。

 

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働き方改革による下請企業へのしわ寄せについて

   

記事のポイント

 

・大企業の働き方改革でやらなくなった仕事を中小企業へ押し付けるなと言う

・ただ中身を読んで行くとあまり働き方改革は関係ない

・結局、今までと同じでちゃんと下請法を守りましょうという内容

・本質的な問題は2つ(下請法の分かりづらさと商習慣を変えることの困難さ

 

 

この下請法関連の話は昔から存在しています。僕も資材を10年以上やっていますが、かなり根深い問題です。

上記内容について一つずつ解説していきます。

  

記事の中身について

記事や公正取引委員会が言っていることは以下の通りです。

  

大企業の働き方改革→やりきれなかった仕事を下請中小企業へタダでやらせる

→そういう違反業者は取り締まります。

  

自分たちの仕事を下請企業にタダでやらせることはもちろん下請法違反です。ですので、このことについては公正取引委員会が言っていることは正しいです。

 

ただ、この記事の詳細を詳しく見ていくと、おやっ?と思うことが出てきます。

 

https://www.jftc.go.jp/shitauke/oshirase/180531files/gaiyou.pdf

これが該当記事なのですが、下請法の一般的な内容が書かれています。

つまり、今回の記事の内容の本質は、働き方改革うんぬんはあまり関係無く、「昔からある下請法という法律をちゃんと守ってね」と改めて言っているに過ぎないのです。(今更の話です)

   

どうして今更下請法遵守の要請が出てくるのかな?

 

その理由は下請法遵守の概念がなかなか徹底されていないからです。では何故以前からある下請法の概念が企業に周知徹底されないのでしょうか。

 

下請法が遵守されない背景

・下請法が難しすぎること

・長年継続してきた商習慣は簡単に変えられない

  

下請法がいつまでも完全に順守されない原因は上記2つです。

 

下請法が難しすぎること

下請法が遵守されない理由の一つ目に、下請法が難しすぎることがあります。僕も10年間資材部員として働いていますが、いまだに全ての解釈が頭に入っている訳ではありません。

あれ?どうだっけ?と思った場合はその都度確認することで、気づかぬうちに違反してしまわないように注意するようにしています。

 

でもどうして資材部員なのに下請法が全部頭に入っていないの?

 

こちらの下請法テキストをご覧下さい。

 

https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/H30textbook.pdf

 

合計で252ページあります。これ見ただけで萎えますよね。そして読んで頂くとご理解頂けると思いますが、結構解釈が難しいことが多いです。例えば・・・

 

Q46 下請事業者との契約に当たり3年の瑕疵担保期間を契約しているが,当社の顧客に対する瑕疵担保期間は1年である。この場合に,受領から3年度にやり直しを要求することは問題ないか。

公正取引委員会HP  https://www.jftc.go.jp/shitauke/sitauke_qa.html#cmsQ27

   

皆さん、この問題の答え分かりますか?公正取引委員会の答えは以下の通りです。

 

A. 顧客に対する瑕疵担保期間が1年を超えない場合は,下請事業者の給付に瑕疵がある場合に親事業者が費用を負担せずにやり直しを求めることができるのは受領後1年までである。下請事業者との間でそれ以上に長い瑕疵担保契約を締結することは直ちに問題となるものではないが,契約の定めにかかわらず1年を超えて費用の全額を負担することなくやり直しをさせることは本法違反となる。

公正取引委員会HP  https://www.jftc.go.jp/shitauke/sitauke_qa.html#cmsQ27

 

答えもまた分かりづらいですよね。

下請取引先と「やり直しの保証期間が3年間」という契約をしても、結局納品から1年間を超えてやり直しさせる場合は、全額やり直しの費用負担をする必要があるというものです。

 

要は、下請法自体が結構解釈が難しいということです。

製造業で下請法と関わる職種(設計・生産管理部門・資材等)の全ての人が下請法を覚えることは現実的に出来ておりません。

 

長年継続してきた商習慣は簡単に変えられない

もし、担当者が下請法をきちんと理解していた場合でも、会社の仕組みが下請法を遵守するようになっていないケースもあります。

 

・会社のルール・規定が下請法を想定出来ていない

・システム上の制約があり下請法が守れない

 

会社のルール規定が下請法を想定していないため問題となるケースや、システムの制約で下請法が守れないケースもあります。

例えば、社内の生産変動に連動して、自動的に注文書の内容が書き換わるケースでは、社内の生産が変動し注文書の数量が減った場合、「受領拒否」という下請法違反になってしまいます。

 

ここでは、担当レベルで気が付いて対応することは非常に困難です。

こういう仕組みに起因する問題は、本来は管理職が問題解決に当たりますが、えてして管理職は現場の状況を詳細に把握できていないため、問題そのものに気が付かないケースがあります。

また気が付いていても、仕組みの切り替えには多大な労力がかかることから、意図的に見過ごされるケースもあります。

 

つまり、下請法を守るためには今までの仕組みや習慣を変える必要があるのですが、それを積極的に変えようというインセンティブが乏しいため、現在でも昔からの親事業所への啓蒙活動が続けられているのです。

 

何十年もかけて出来た仕組み・習慣を変えるのは容易では無いね・・・

 

まとめ

・短期的には公正取引委員会のトップダウンでの「具体的な」指示が必要

・もちろん資材部門の下請法への理解を深める努力が必要

・長期的には下請法という規制に頼らずに対等にやりとりできる力をつけるべき

 

直近は公正取引委員会のトップダウンかつ具体的な指示と資材部門の継続的な努力が必要です。

一方で長期的には下請法という規制に頼らない方法が必要です。資本主義の仕組みは企業同士の自由な取引が求められます。規制というのは自由な取引を阻害するものなので、基本は無い方が望ましいです。

下請企業が不当な対応を取られる理由は、他に代替がきくからです。

もし下請企業であっても他に代替が無ければ、不当な行動に対抗することもできます。長期的には下請企業は自分たちの技術力を高めていくことが求められます。

(それが出来ない企業は大企業による不当対応が無くてもいずれ淘汰されていきます)

 

色々好き勝手書きましたが、僕は下請法に直接関係する部門の人間として、引き続き下請法についての理解を深めていきたいと思っています。

ここまで読んで頂きありがとうございました。他にも金型に関する下請法の話をまとめていますので、気になる方が以下リンクよりご覧ください。

 

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