この記事は以下の方向けに書いています。
・資材調達・購買部門に配属されたけど、納期管理方法を知りたい
・納期問題が起きた時はどうすれば良いのか知りたい
こんにちは、コロスケです。
今日のテーマは、製造業の資材部門の重要な役割の一つである納期交渉の方法です。
資材部門や生産管理部門の人は、納期問題と聞くと、ドキッとしてしまいますよね?
深刻な納期問題が発生すると、社内のモノ作りが止まるかもしれないので、社内が大騒ぎになります。
そして、モノを入手するのが仕事である資材部門へのプレッシャーは半端ではありません。
そんなプレッシャーもあり、納期問題対応に苦手意識を持っている資材部員もいるかと思います。
ただ、実際のところ、やり方さえ間違えなければそこまでプレッシャーを感じることはありませんし、むしろ資材部門の存在感がアップするチャンスでもあります。
今回は資材歴10年の現役資材部員の著者が製造業における納期交渉の進め方をまとめていきます。
納期交渉ってどういうことをするの?どういった手順で進めれば良いの?といった疑問を解決していきます。
納期短縮交渉のコツ5選!【購入品の納期管理方法を詳しく解説】
社内の必要な時期にモノが納入されない事態を納期問題と言います。
そして納期問題が発生した時に、取引先の納期を前倒しするために交渉することを「納期交渉」と言います。
深刻な納期問題になると、社内が大騒ぎになりますが、慌てる必要は全くありません。
適切な対応を取れば資材に火の粉が降りかかることはありませんし、むしろ「社内の生産ラインを守るために頑張っている」と社内関係者から評価されます。
でも納期交渉は、話術や交渉術が必要なんじゃない?僕はそういう能力は無いんだけど・・・
大丈夫です。納期交渉で大事なのは「正しい手順」です。それさえ守れば誰にでも出来ます。では一つずつ詳しく解説していきます。
初動がとにかく大事
納期問題は、最初から深刻な問題だった訳ではありません。
最初はふとすると見逃してしまいがちな小さい問題であるケースがほとんどです。
ボヤであれば簡単に火消しが出来ますが、燃え盛った火を消すのはとても大変です。
例えば、モノを納入してほしい期日(納期)まで1か月あれば、色々な調整の余地がありますが、納期が明日となると、もう調整の余地はほとんど残されておりません。
どうすれば、ボヤの段階で納期問題を発見できるのかな?
これらの納期問題を早期に発見する能力は、資材部員として仕事をしていれば自然と身につくものです。
大事なのは、取引先や社内からの一見大したことが無さそうなメールなどの情報をスルーせずにきちんと納入予定日を確認していくことです。
また、一般的に市場で流通している汎用品は、メーカーで在庫していたり、他社向けの製品を融通してもらえるなど、調整がしやすいことが多いです。
一方で、自社向けの特注品の場合は、納期問題に発展しやすいので、特に注意して納期管理しましょう。
早め早めに納期確認することが大事なんだね
どちらの責任で納期問題が起きているかを明確にする
納期問題に直面した時、自分たち/取引先どちらの責任でこの納期問題が起きているのかを、はっきりさせる必要があります。
自分たちの責任:短納期注文。手配数量を後で増やしている。納期を前倒ししている。
取引先側の責任:取引先が約束した納期に遅れている。納期遅延の連絡をしていない。
納期交渉を行っているとき、どちらの責任で納期問題が起きているかを曖昧なままにして交渉をしている資材部員がいますが、これはNGです。
責任をはっきりさせる理由は「どちらに責任があるかで交渉の進め方が変わってくるから」です。
責任の所在によってどのように進め方が変わるの?
自分たちの責任:お願いベースでの納期交渉となる
取引先側の責任:取引先の責任で納期調整してもらう
この区分けが出来ないと資材部員としては一人前になれません。
相手に責任が無いにも関わらず取引先に厳しく接している資材部員がいますがこれはNGですので改めましょう。
逆もまたしかりです。取引先に責任がある時にお願いベースで依頼してはいけません。
取引先には丁寧に接した方が良いから、取引先の責任でもお願いベースで交渉した方が良いんじゃない?
もちろん人と人の交渉ですので、相手のことを尊重し、紳士的に対応する必要があります。
一方で資材部門は対取引先の面で、会社を代表しております。
取引先の責任で納期が遅れている場合は、取引先の責任でリカバリーして頂くよう依頼する必要があります。
これが出来ない資材部員は、社内関係者から信頼を得られませんし、場合によっては取引先に舐められます。
取引先と資材部門はなれ合いの関係ではありません。信頼関係を構築しつつも必要があれば、言うべきことは言わなければなりません。
製造工程表を入手する
納期交渉の肝は「如何に納入予定日を前倒しできるか」に尽きます。
これはつまり、購入品の製造スケジュールを短縮することと同義です。あまりうまくない納期交渉は以下の通りです。
今の納入予定日だと間に合わないので、1か月納期を前倒ししてください。
調整しましたが、一日も前倒しできませんでした。
どうして前倒しできないんですか??
全力を尽くしているのですが、工程がひっ迫していて、調整が出来ませんでした。
そんな・・・
取引先には既に計画した製造スケジュールがあるため、出来る限りそのスケジュールを維持しようとします。
特に取引先の工場が混んでいる場合、調整が難しいケースが多いです。
しかし、それで諦めてしまってはいけません。
どうしても納期前倒しが必要な場合に、一番簡単に納期を前倒しする方法が「注文品の製造工程(スケジュール)表」を入手することです。
具体的にいつ、どの工程を経て、最終的にいつ出荷するのかが一目瞭然でわかります。
口頭では「調整の余地は無い」と言っているケースでも、工程表見ると前倒しの余地があることがとても多いです。
僕が出会った簡単なケースを例に挙げると、国内工場において、最終検査が終わって出荷できる状態になってからモノが届くまで3日もかかっているケースもありました。
検査終わった日は出荷せず、次の日に梱包作業を行い出荷、定期便で配送するため、翌日に届くスケジュールになっていました。
検査した日に出荷すれば、一日前倒しできますし、定期便で無ければもう一日前倒しできるかもしれません。
どうして工程表で余力があるのに、事前に前倒ししてくれないの?
その理由は、「取引先の製造部門が出来る限り効率的にモノ作りを進めたいから」です。
こちらからの依頼に基づき工程を入れ替えたり特別な対応をすることは、モノ作り全体から見ると効率が悪くなります。
なので取引先の製造部門は、出来る限り資材部門からの要望に応えずにいつも通りモノ作りをしたいと思っています。
その話を聞いて、取引先に工程表の提出をお願いしたけど断られちゃったよ・・・
取引先にとって工程表を出すということは丸裸になることと同義ですので、出来る限り提出を拒みます。
取引先へ工程表の提出を依頼するときは、この納期問題がどちらの責任で起きているのかによって対応が変わってきます。
自分たちの責任:お願いベースのため、無理に提出は要請出来ない。
取引先側の責任:取引先の責任で必ず出してもらう
自分たちの責任で納期問題が発生している場合は、基本的に工程表の提出は要請できませんので、工程表無しでお願いベースで前倒し依頼を行います。
取引先責の場合は、必ずだしてもらうように依頼する権利があります。
それでも出してこない場合もありますが、その場合は「工程表出すか、納期を前倒しするか」どちらかの回答が欲しいと言いましょう。
工程表出せない場合、恐らく納期前倒ししてくれるはずです。
取引先のミスで納期問題が起きた時は、言うべきことは言わなきゃいけないんだね
工場へ行って納期を詰めるのが一番有効
メールや電話で調整しても日にちが経つだけで、納期交渉が進展しないケースがあります。
取引先も日々色々な客先から納期前倒し依頼を受けるので、電話・メールでの依頼では優先順位はあがりません。
取引先の工場まで危機感が伝わっていないのです。
そこで一番有効な手法が、取引先の工場へ行き工場の製造日程を管理している人と直接話すことです。
わざわざ工場まで来て依頼に来るということで、危機感が伝わりますし、何らかしらの前倒し回答をしなければならないという心理的圧力が取引先にかかります。
工場行きたいと言ったけど、断られてしまったよ・・・
工程表と同じで工場に来られると色々余計なことを言われますし、来所対応をしなければならないため、基本的には取引先は嫌がります。
ですので、工場に行くと申し入れるだけで納期が前倒しできるケースもあります。
また、自分たちの責任で納期問題となっている場合は、工場訪問の申し入れも無理強いはできません。
取引先の方に相談して了承を得えましょう(拝み倒して工場へ行かせて頂くケースもありますが・・・)。
社内の製造日程の調整も大事
今までは取引先との納期交渉でしたが、それと同じくらい大事なこととして「社内の製造日程の調整」が重要です。
社内の製造日程を管理している生産管理部門との納期交渉です。
実は資材部門は取引先と社内両方と納期交渉をしているのです。
資材部門の付加価値は「社内と取引先の間に立って中立な立場で納期交渉を進められる点」です。
例えば自分たちの責任で、納期前倒し依頼しなければならないケースで、取引先が納入予定日を前倒しできなかった場合、資材部門は社内の製造日程を調整するように依頼します。
どちらの製造日程を調整すべきかを中立な立場で判断し、社内と取引先の日程の折り合いをつけていく。これが資材による納期交渉です。
(ただ社内が悪いケースでも社内側の日程がどうにも調整できずお願いベースで依頼することも多々あります)
資材部門は取引先に依頼するばっかりでは無いんだね
まとめ(納期交渉のコツ5選)
納期交渉のコツのまとめです。
取引先責で納期交渉を行う場合、一日でも早く取引先の工場へ行き、工程表を見ながら納期を詰めるのが一番効率的です。
納期交渉をしなければいけないケースでは今回のコツを実践してみると良い結果が得られます。
深刻な納期問題になると、納期交渉も相手の工場を訪問したりハードになります。
毎日このようなことは出来ないので、出来る限り深刻な納期問題の芽を摘み取り、簡単な納期交渉で終わらせることも大事です。
納期交渉は資材が存在感を発揮できる一番の機会です。
苦手意識がある方もこのコツを実践して納期交渉のプロとして活躍しましょう。
このブログ( Corosuke blog)では、僕が働く「資材・購買業務の紹介」や「日々の生産性向上による生活の質UP」「投資を通じた自己実現」などをまとめています。
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