こんにちは、コロスケ( Corosuke blog)です。
この記事では、2022年11月の調達環境について解説していきます。
【所感】2022年11月の最新調達環境を解説|円安・納期問題
・歴史的な水準の円安
・海外市場の景気後退と日本市場の堅調さ
金融引き締めを行う海外と、緩和を続ける日本では調達市況が異なっています。
歴史的円安水準
2022年10月に為替が1ドル150円を突破しました。
2022年3月に115円だったレートが、たった半年で150円まで暴落しています。
この影響で、為替影響での値上げが増えてきました。
こんなにも円安となっている要因は、外国との金利差にあります。
日本は、現在もゼロ金利政策を継続しております。
一方で米国など海外では、インフレを抑制するために急速に利上げを進めています。
米国では2年債利回りが4%を超えており、ノーリスクで4%もの利息が得られる状態です。
利息が付かない円よりも、4%の利息が得られるドルが欲しくなるのは自然な流れです。
こうした金利差を受け、日本円を売って、米ドルを買う動きが急速に進んでいます。
日本でも、利息目当てに円を売ってドルを買う人が増えています。
いま外貨預金の人気が急上昇しています。ソニー銀行では2月末と6月末を比較すると、外貨預金全体の購入額が2.6倍に増加したといいます。
【出典】「外貨預金に殺到」日本円から移すときに知っておきたいこと
また今の日本は、2019年と比べてインバウンド需要がほとんど戻っていません。
観光客が減るということは、円を買う需要も減ります。
こうした外国人観光客の円買い実需が弱いことも、円安の一つの要因となっています。
国内調達に戻すべき?
こんなに円安になったら、国内調達に戻すべきかな?
円安が進むと、国内調達の方が安いケースが増えます。
ですが国内調達に戻すべきかは、よく考えた方が良いかもしれません。
・為替はいつまで円安か分からない
・日本国内のメーカの生産能力に余力は少ない
そもそも今の為替は、投機要因も大きいです。
個人的には、長期にわたって150円台が続くとは思えません。
調達先を変えるのには、時間がかかります。
評価を終えて、導入する頃には円安が収まっている可能性もありそうです。
また、国内工場は生産の余力がないところが多いです。
国内の工場は1990年代以降、年々需要が減少しておりました。
多くの工場は、実需に合わせて生産能力を減らしてきました。
そんな中、いきなり「国内で作ってくれ」と言われても生産能力に余力がないところがほとんどです。
結局、為替が動いてから考えるのでは遅いです。
為替が動く前から、円安時にどうするかを対策を事前に練っておく必要があります。
ただそれは、バイヤー個人が考えるというより、経営層が考えるべき話です。
個人的には、海外比率が高い企業は「為替マリー効果」があるので、あたふたする必要はないかなと思っています。
直近の決算でも、海外比率が高い企業は上方修正するところが多そうです。
NIDEC(日本電産)の2Q決算🚩
— コロスケ@現役資材部員 (@Corosukeblog) October 26, 2022
売上1.13兆円(前年同期比24.2%増)
営業利益9,636億円(前年同期比8.1%増)
※2Q累計
増益は、為替によるところが大きいですね。海外展開している製造業は円安が追い風です。 pic.twitter.com/opUqX85g3p
一方で国内向けにビジネスをしている企業は、円安の影響が抑えるべく、今からでもサプライチェーンを変えていった方が良いと思われます。
(今後も、長期的には円安になる可能性もあり得るため)
海外市場の景気後退と日本市場の堅調さ
2022年は欧米は、急速な利上げによって需要が急速に減少しています。
アメリカは、住宅金利が7%という高さになっており、急速に住宅市場が減速しています。
また米PMI(製造業購買担当者指数)も「49.9」と経済活動の拡大・縮小の境目である50を割っています。
一方で日本市場は、金融緩和が継続しており、比較的堅調です。
住宅着工件数も比較的安定しています。
国内の新設住宅着工件数をグラフにまとめました🚩
— コロスケ@現役資材部員 (@Corosukeblog) October 21, 2022
海外は金利上昇で不動産市場への影響が出ていますが、日本は低金利を継続しており、住宅着工も比較的堅調な印象です。 pic.twitter.com/Yiifp50zdD
また日本のPMI指数は、まだ改善傾向が続いています。
(ただし、改善の速度は鈍化してきています)
日本のPMI(製造業購買担当者景気指数)の最新状況をまとめました🚩
— コロスケ@現役資材部員 (@Corosukeblog) October 27, 2022
PMIは、製造業約 400 社の購買担当者への調査結果を指数にしたものです。僕たちの今の肌感覚をまとめたものです。
直近10月の速報では、拡大は継続しているもののそのペースが徐々に鈍化していることがわかります。 pic.twitter.com/4T2gmhudjU
日本では、製造業の工場・物流倉庫など、設備投資の流れは続いています。
また車メーカーの調達難が徐々に解消しており、増産傾向にあることも追い風となっています。
国内の新車自動車販売台数をグラフ化しました🚩
— コロスケ@現役資材部員 (@Corosukeblog) October 24, 2022
ようやく前年同月比でプラスに転じました。部材の入手状況が少しずつ改善している事が伺えます。
一方で「9月の新車販売台数としては高い水準ではない」との事で、依然として部材入手が課題となっております。 pic.twitter.com/TaDP7YPx8O
こうした車・設備系の堅調さが、日本市場を下支えしているのではと思っています。
今の調達環境雑感
僕が感じる2022年11月時点での調達環境は、以下のとおりです。
・明らかに調達難のピークは越えた
・ただし未だに調達難の部材もあり、品目・メーカーによって濃淡がある
2022年6月頃から、納期問題が起きる頻度が減ってきました。
さらに2022年11月になって、2022年6月よりも若干調達環境は改善している気がします。
取引先はまだ忙しいけど、部材確保もしやすくなり、納期遵守率が向上しています。
そういう意味では、PMI指数と同じような肌感覚です。
日本のPMI(製造業購買担当者景気指数)の最新状況をまとめました🚩
— コロスケ@現役資材部員 (@Corosukeblog) October 27, 2022
PMIは、製造業約 400 社の購買担当者への調査結果を指数にしたものです。僕たちの今の肌感覚をまとめたものです。
直近10月の速報では、拡大は継続しているもののそのペースが徐々に鈍化していることがわかります。 pic.twitter.com/4T2gmhudjU
一方で、未だに長納期となっている部材も多いです。
車や産機など、まだ堅調な業界への売上比率が高い企業は、まだまだ油断できない状況です。
今後の見通しは
2022年6月当時は、年末には調整局面が来るかと思っていました。
しかし今の状況を見ると、すぐに市況が悪化する感じはしません。
・ゆっくりと徐々に調達環境は改善していく
・欧米、中国の景気悪化により、日本の市況もゆっくりと減速していく
これまでは急ブレーキによって、在庫がだぶつく心配をしていました。
ですが、今はそこまでの心配はしていません。
一方で世界的には景気が悪化しており、徐々にその波が日本にも来るのでは?と予想しております。
いずれにせよ、市況が変化したときは、それに合わせて適切に対応していきましょう!
この記事が参考になれば、幸いです。
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